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4回転がなくても並外れて強い!
コストルナヤの情熱と理知、緊迫感。 

text by

松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph byAsami Enomoto

posted2019/12/04 19:00

4回転がなくても並外れて強い!コストルナヤの情熱と理知、緊迫感。<Number Web> photograph by Asami Enomoto

コストルナヤのグランプリシリーズ2戦合計476.00点は女子全選手の中で最高得点。ファイナルでも優勝候補のひとりだ。

堂々とした態度の背後にある「重さ」。

 コストルナヤには、ロシアのみならず日本のメディアの関心も高かった。その分、試合後の取材にも時間を取られることになった。

 ときにシニアで経験の長い選手でも疲労を感じさせることもあるが、コストルナヤは淡々と、落ち着いて対応した。その姿もまた、シニアデビューの選手であることを忘れさせた。

 でも、落ち着いた、堂々とした態度の背後には、「重さ」がある。

  練習の際、ジャンプで転倒し涙に暮れる映像を目にしたことがある。そこに感じられたのは、まるで自身が瀬戸際にいるかのような、緊迫感だった。

 先輩にはアリーナ・ザギトワたちがいて、同時にシニアデビューしたトゥルソワらがいる。意識しないわけにはいかない。

 その中で、自分はどう生きるか。

生きる道を探してきた真摯さ。

 フランス杯で、興味深い話をしている。

 自分よりも下の世代の選手たちが4回転ジャンプを跳ぶことに触れつつ、どう対峙するか、こう語ったのだ。

「1つの方法は、自分も4回転ジャンプをマスターすることです。もう1つのやり方は、カロリーナ・コストナーのやり方です。彼女は見ている観客の心に訴えかける演技をしました」

 16歳のコストルナヤがコストナーをしっかり認識していること、自身の歩む先のモデルとして意識していること。それは情熱と理知あるフィギュアスケートへの向き合い方であり、生きる道を探してきた真摯さだった。

 傲慢ではない、でも自負を持って。

 そんなコストルナヤをはじめ、トゥルソワ、シェルバコワとそろったロシアのシニアデビュー組、ザギトワ、さらには紀平梨花らが出場するファイナル。

 それぞれに、自身の生きる道を求める選手たちの舞台が幕を開ける。

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アレクサンドラ・トゥルソワ
アンナ・シェルバコワ
アリョーナ・コストルナヤ

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