オリンピックへの道BACK NUMBER

4回転がなくても並外れて強い!
コストルナヤの情熱と理知、緊迫感。 

text by

松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

PROFILE

photograph byAsami Enomoto

posted2019/12/04 19:00

4回転がなくても並外れて強い!コストルナヤの情熱と理知、緊迫感。<Number Web> photograph by Asami Enomoto

コストルナヤのグランプリシリーズ2戦合計476.00点は女子全選手の中で最高得点。ファイナルでも優勝候補のひとりだ。

合計得点トップはコストルナヤ。

 ただ、ファイナルに出場する6名の中で、合計得点トップで進出したのはトゥルソワでもシェルバコワでもなく、コストルナヤであった。

 コストルナヤは、現時点では、4回転ジャンプを跳ばない。トリプルアクセルをショートで1本、フリーで2本跳ぶ。

 むろん、トリプルアクセルを跳べて、しかも精度も高いことだけで、十分強みを持っていると言える。

 それでもコストルナヤが強いインパクトを与えたのは、トータルパッケージ、つまりは総合的な力にある。

 ジャンプでは流れを途切らせることがなく、また、ジャンプをはじめとする要素と要素のつなぎも流れがある。

 スケーティング、身体を上手にいかした動作など、「見せる」という点も含め、シニアデビューしたばかりの選手とは思えないレベルにある。それらが加点となり、総合得点の高さとなって表れている。

ショートプログラムの世界最高得点。

 NHK杯は、日本でそんな地力をまざまざと見せる舞台となった。

 しかもフリーでは、2つ目のトリプルアクセルの着氷が乱れ回転不足になりながら、その失敗を引きずらず、見事な演技を見せた。その落ち着きもまた、今季シニアデビューを果たした16歳とは思わせなかった。

「満足しています。ショートプログラムの世界最高得点は光栄でした」

 と語りつつ、コストルナヤは、かすかな悔いも言葉に感じさせた。

「トリプルアクセルをすべて跳べていれば、もっといい点が、あと3点は出ていたと思います。総合得点でも世界最高(トゥルソワの241.02点)を目指したかったです」

【次ページ】 堂々とした態度の背後にある「重さ」。

BACK 1 2 3 NEXT
アレクサンドラ・トゥルソワ
アンナ・シェルバコワ
アリョーナ・コストルナヤ

フィギュアスケートの前後の記事

ページトップ