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南野拓実の戦術眼も急成長!
CLで見せたロビングパスの妙技。
posted2019/10/29 11:45
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph by
Uniphoto Press
同じサッカーの試合が、まるで違うように見える。
CLザルツブルクとナポリの一戦を観客席から観戦してきた際の正直な感想だ。
普段は記者席から試合を追うが、この日入手できたチケットはゴールのちょうど裏の席。選手はピッチ上で空間を認知して様々な距離を把握しながらプレーしている。
よく試合の状況を俯瞰視することが大事だというが、だがそもそもどのように俯瞰的に選手はとらえるものだろうか。テレビ画面のようにすべてを横からの映像でみたり、考えたりするものではなかったりする。
例えば、分析映像を作って、チームのシステムや動き方にどんな狙いがあって、どこにミスが生じるのかを指摘するものがSNSでよくアップされる。面白い視点で、なるほどと思わせられるものもある中で、選手視点での考え方が欠如していることが多いのではないかと思わざるをえない。
試合をしている選手の立ち位置から考えると、ゴール方向を考えた見方になるほうが自然だ。テレビ画面で見えているように、すべてを把握できるものではない。ピッチ上の選手からでは、どうしても見えないコースとスペースがある。
選手は駒ではなく、様々な動きをする人間だ。それぞれの選手にはそれぞれの間合いがあり、厚みがある。だからこそ、適切な距離感を取るために、幅と深みをしっかりと認知して修正できる空間把握能力が求められる。
「相手の背中を取る」難しさ。
ドイツサッカー連盟は攻撃のプレー原則として、「パスを受けるときは相手の背中を取る」という表現を使っている。
しかし、ゴール裏から縦方向に試合を見ていると、傍目にパスコースができているように見えるときでも、相手選手の配置や狙い次第では、とてもパスを通せない状況というのが確かに存在することがよくわかる。
試合の話に戻ろう。この日のザルツブルクは狙い通りの守備でボールを奪い、そこから素早くカウンターに持ち込めたシーンもあった。だが、すぐに帰陣して守備組織を整えるナポリに対して、なかなか決定機までは持ち込めない時間帯が続いていた。