マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
ドラ7の新人が交流戦の首位打者に。
スカウトはなぜ彼を低く評価したか。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKyodo News
posted2019/06/28 11:30
大卒とはいえ、ドラフト7位のルーキーがこの時期に一軍どころか主力に定着しているのは驚くべき事態だ。
スカウトが選手を「見過ぎる」盲点。
「こういうことは、あると思うんですよ」
交流戦のなかば頃、オリックスの「5番ファースト」に定着し始めた中川圭太について、あるスカウトがこんな話を聞かせてくれた。
「見過ぎたのかもしれないですねぇ…まあ、私も含めてね」
スカウティングの“盲点”。
それは、見過ぎてかえって見えなくなる……そんな内容だった。
「何度も何度も見ていると、どういうわけか、長所より欠点とかアラばかり見えてくる。いつの間にか、アラのほうを探そうとしてしまう……って言ったほうが正確かもしれないですね。それは、人を見る場合も、物を見る場合もそうかもしれない。
繰り返し見ているうちに、無意識に欠点のほうを探すようになって、たぶん最初は、おおっいいな、で始まってるはずなんですよ。それなのに、何度も見ているうちにそういう新鮮な感動っていうんですか、長所のほうが見えなくなってしまう。それはあると思うんですよ」
スカウトにも「倦怠期」がある?
今のスカウトたちは、みんな真面目ですから、と言って笑ったベテランのそのスカウトの方は、こう続けた。
「今はどの球団も、大学別に担当者が分かれていて、自分の担当する大学のゲームはほぼ全試合見てるはずです、春先のオープン戦からずっと。何度も見るのは大事なことですけれど、何度も見ているうちに、迷いが出る、疑いを持つ、わからなくなる、見えなくなる……そういう負のスパイラル、確かにあるかもしれませんね」
選手を見過ぎてしまうことからやって来る、見ている側の「倦怠期」。そういう表現でも、そんなに外れていないのではないか。
オリックス・中川圭太の「活躍」は、貴重なケーススタディになりそうですね。
「難しいですね、何年経っても“答え”が出ない……」