マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
ドラ7の新人が交流戦の首位打者に。
スカウトはなぜ彼を低く評価したか。
posted2019/06/28 11:30
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Kyodo News
5番ファースト・中川。
そう言ってピンと来る方は、まだそんなにいないのではないか。
しかし、「ルーキー初の交流戦首位打者」という言い方をすれば、俄然気になってくるのではないか。
東洋大からオリックスに進んだ新人内野手が、3割8分6厘という高い打率で「交流戦首位打者」という至難の栄誉をつかんだ。
オリックスの新人内野手・中川圭太が最初に話題に上ったのは、もしかしたら彼が、PL学園からプロに進む最後の1人になるかもしれない……そんな話題のほうだった。
本人の“実力”とはちょっと離れたところでまず話題になったルーキーだったが、肝心の実力だって、ちょっとやそっとのものじゃなかったわけだ。
豪快というよりも「実戦力」が高い。
PL学園時代からプレーは何度か見ていた。
野球部の休部、廃部が報道され始め、それにつれて選手のレベルも“普通”になってきていたPLで、ただ1人PLらしいレベルの野球を保っていた上手な「4番セカンド」だった。
東洋大では、1年生からレギュラーを通していた。特に、二塁手に定着した3年生以降のプレーぶりは「実戦力」がとても高く見えていた。
ハッタリをかますような豪快なスイングは決してしないかわりに、ここ一番の場面でハッとするようなバッティング、フィールディングを見せてくれる。
走者を二塁に置いて先取点のほしい場面、スライダー、チェンジアップが外れた2ボールから、もう真っすぐしかないその真っすぐを、涼しい顔でポーンとライト前に弾き返す。
先取点のチャンスで自分がクリーンアップなら、よーし! と気負って引っ張った快打で先取点! そうなりそうなものだが、この中川は妙に燃えすぎない。
力んで、そうとわかって投げてくる“外”を引っかけてまんまと打ち損じるような真似は決してしない。東洋大の大先輩・今岡誠(元阪神ほか)が、4年生の頃にちょうどこんなバッティングだった。プレースタイルから背格好まで、そっくり「今岡二世」だと感じたものだ。