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憧れのギータから「見て学んでね」。
西武・戸川大輔、育成から4番候補へ。
posted2019/06/28 11:15
text by
市川忍Shinobu Ichikawa
photograph by
Kyodo News
わずか10試合、しかし戸川大輔にとっては貴重な10試合だった。
今シーズン、プロ入り初めての一軍昇格を果たした戸川は現在、二軍でイースタン・リーグの試合と練習に明け暮れている。強くなり始めた初夏の日差しで肌はすでにこんがりと焼け、その顔からは汗がしたたり落ちている。居残り練習を終えたあと、バットを大切そうに抱えたまま話を聞かせてくれた。
戸川は2015年、育成ドラフト1位で北海高校から西武に入団した。そのオフ、支配下登録選手となったプロ入り5年目の外野手だ。初めての一軍昇格は今シーズンの4月5日。2試合に出場したあと二軍に落ち、5月24日に2度目の昇格。プロ初ヒット、プロ初本塁打を記録した。
しかし、6月6日に再び二軍へ。赤田将吾・一軍打撃コーチは語る。
打つだけではレギュラーにはなれない。
「戸川に関しては内容ですかね。ヒットも出て、打つほうは評価が上がったと思います。ただ、ヒットが出たあと、相手の攻め方が変わると一方的にやられてしまう打席が増えました。守備のエラーもあったし、バッティングもそうなんですけど、大事にいこうとし過ぎると、本来の自分のプレーができなくなります。
最初のころは初球から思い切り振りにいけていたのに、徐々に大事にいき過ぎるようになって、最初の甘い球を見逃してしまう。打席を増やすうちに甘い球を見逃すようになってしまいましたね」
二軍降格の際には「課題もいっぱい見つかったよね」と声をかけたと話すが、成長するためには必要な過程だと赤田コーチは語る。
「一軍を経験したことで、やることが明確に見えたんじゃないかと思います。打撃コーチの僕が言うのもなんですけど、打つだけではレギュラーにはなれないことがよくわかったと思いますね」
同じ外野手である木村文紀、金子侑司からポジションを奪うためには先輩と同等かそれ以上の守備力と走力が求められることを痛感したことだろう。