マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
選抜2大投手の「明暗」を考える。
星稜・奥川と横浜・及川の現在地。
posted2019/03/28 07:30
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Kyodo News
同じ高校野球の「甲子園大会」でも、以前の「センバツ」はわりとスタンドも空いていて、落ち着いて野球を観戦できる印象があったが、いつからだろう、センバツにも、たくさんのお客さんが詰めかけるようになってきた。
今年のセンバツも、初日、2日目、学校が春休みの土日のせいもあったのかもしれないが、外野スタンドまで超満員。4万の観客が「甲子園」を埋めた。
そんな中でマウンドに上がった星稜高・奥川恭伸と、横浜高・及川雅貴。土日の大観衆は、注目の快腕2人の登場が“人”を呼んだのかもしれない。
星稜高・奥川恭伸の投げっぷりは「見事!」という賛辞しかない。
これだけのサイズ(183cm/82kg)で150キロの快速球を投げられるオーバーハンドの高校生投手が、一方でこれだけ多彩な変化球を自在に制御できる。こんな投手が「高校野球」という舞台にこれまでいただろうか。
松坂、田中、ダル以上の球種。
松坂大輔、田中将大、ダルビッシュ有……それぞれ、とんでもないスピードボールと、“魔球”と評されるほどの変化球を有する剛腕たちであったが、奥川ほどの球種はなかった。
1回戦、大阪・履正社高を3安打17奪三振完封に抑えた奥川投手は、見たところ、ストライクを取るタテのスライダー、空振りを奪うショートバウンドの高速スライダーに、チェンジアップ、フォーク、さらには100キロ前後のカーブ。この5種類の“飛び道具”を投げていた。
すばらしかったのは、その5種をすべて狙ったポイントに投げ分けていたことだ。そのほとんどを低めの、バットの芯で捉えられにくいポイントに制御できる精度の高さは、すでに高校生の技術レベルをはるかに超えている。
逆に、速球のゾーンは高かった。
コンスタントに145キロ前後をマークした速球だが、そのゾーンは打者のベルトより上。胸のマークのあたりを突いたボールがほとんどだったのではないか。
それが、結果的には、低めに変化球をコントロールされながら、速球で高いゾーンを突かれる。そんな「高低の緩急」が履正社打線を一層戸惑わせることになった。