マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
選抜2大投手の「明暗」を考える。
星稜・奥川と横浜・及川の現在地。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKyodo News
posted2019/03/28 07:30
履正社相手に鮮やかな完封勝ち。星稜・奥川恭伸の総合力の高さは本物だった。
希少な重心の高いフォーム。
低めに変化球が曲がったり沈んだり、一転、目の近くに伸びてくる体感の快速球。思わずバットが出てしまって、ボールはそのスイングのわずかに上の空間を通過。空振りの山ができた。
身長のわりに、歩幅の狭い踏み込みだから、見た感じ“立ち腰”のような重心の高い投球フォームは、今までの日本人投手には珍しいタイプだ。おそらく、傾斜の急なポコッとしたマウンド、それも土質が堅いマウンドで、左足を踏み込んだ瞬間にパーン! と腕を叩く。そんな環境がお得意なのではないか……。
すでに、マウンドの土質を堅くする方向で決まっている「甲子園」が、もしセンバツの前にその改修がなされたら、奥川投手のピッチングに果たしてどんな変化が……そんな興味もあったのだが、改修はセンバツ後になった模様だ。その答えは、この夏以降に持ち越されることになった。
及川の投球練習に見えた予兆。
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明豊高戦で3回途中までに5点を失ってマウンドを降りた横浜高・及川雅貴にとっては、ちょっと気の毒なセンバツになったようだ。
『及川雅貴についていえば今できていないことのすべてが彼の「伸びしろ」と考えるべきだろう。おそらく仕上がり途上の3月末のこの時期。もしかしたら、ええっ! と驚くような乱調があるかもしれないが、万が一あっても、それは「時期」のせいと考えればよい。』
前回のコラムでお話ししたことが、現実になってしまった。
初回の投球練習に“乱調”の予兆が見えていた。最初のボールがバックネットに、その後の5球もバランスに苦慮しながら投げてショートバウンドやはっきりしたボールばかり。
インプレーになってからも、ストライク、ボールがはっきりして、特に武器のスライダーのリリースポイントが定まらず、明豊打線に速球を狙い打ちされ、レフトポール付近に120m級の打球(ファール)を飛ばされたり、センター前のライナーのヒットがなかなか落ちて来なかったり、打球の様子からも本調子にない気配がはっきりしていた。