マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
選抜2大投手の「明暗」を考える。
星稜・奥川と横浜・及川の現在地。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKyodo News
posted2019/03/28 07:30
履正社相手に鮮やかな完封勝ち。星稜・奥川恭伸の総合力の高さは本物だった。
ピッチングの“主旨”にズレが?
良いとか悪いとかではなく、ピッチングの“主旨”にズレがあるように見えていた。
目の前の打者に対して全力で腕を振ってやっつけるといういちばん大切なことより、「こう投げなければ……」みたいな理想のフォームが彼の意識の中にあって、なんとかその上をなぞろうとして、自分のピッチングの世界を窮屈にしてしまったような……そんな、かわいそうな気がして、途中から見ていられなくなってしまった。
2人の投球は「明暗」ではない。
このセンバツの1回戦だけを取り上げれば、奥川投手がすばらしく、及川投手はまだまだだったという“評”になるのだろう。
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その通りだと思う。
奥川投手は中学軟式で全国制覇を果たし、進学した星稜高でも1年からエース格として奮投しており、そういう意味では「早熟系」であり、野球に関してもめちゃくちゃ器用で「野球上手」だ。
一方で、及川投手は、まだこの春に、いいだの悪いだの言ってはいけないタイプの「大器晩成系」と見る。
理由は私もわからないのが、長身サウスポーの本格派というのは、時間をかけて育てねばならない……そんな“経験則”をお持ちの方も少なくないはずだ。
今年のセンバツ、注目の投手・奥川と及川は「明暗」が分かれた。
そんな声も聞いたが、私はこの1回戦の結果を決して「明暗」などとは考えない。
少々いじわるな見方になるが、投手には「一世一代のピッチング」というやつがある。
みんながみんなというわけではないが、投手人生の中で、実力を超えるような快投をやってのけることもある。もし今回の奥川がそれだったとしたら……と、ふと思った。