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丸佳浩の打順と次打者のメリット。
広島で鈴木誠也、巨人は坂本勇人。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKyodo News
posted2019/03/01 17:00
キャンプ、オープン戦で快音を響かせている丸佳浩。巨人打線に厚みが生まれるのは間違いない。
「丸さんは初球から……」
ただここで発した鈴木の感想が、丸という存在が抜けた周囲への影響の1つを物語っていた。
「丸さんは初球からバンバンいかないタイプ。(ネクストバッターズサークルで初球は)どうせ振らないだろうと見ていたんですけど……」
天才型の長野は好球必打の典型のような打者だけに、いきなり初球に手を出したわけだ。
「タイプが違いますから、やっていく中で、長野さんのスタイルを頭に入れてやっていきたい」
130四球、130三振。
昨年、広島で丸が記録した四球と三振である。いずれもリーグ最多のこの数字は、単純に四球と三振がめちゃくちゃ多い個人レコードというだけではない。
追い込まれたら不利になる。そこで甘い球が来たら初球から積極的に打ちに出るというのが普通の打者心理だ。
次の打者へのアドバンテージ。
ところが丸は違う。
狙い球を絞ってそのボールがくるまで待てる。もうひとつ突っ込んだ言い方をすれば、そのボールを投げさせるために相手投手を追い込んでいく。
丸はそうやってカウントを作れる打者なのである。
もちろんどっちが良くてどっちが悪いということではない。丸はだから三振の数も多い。
ただ、確かに昨年の鈴木はじっくり腰を据えて球数を投げさせる丸の打席を見ながら、様々な準備をする時間をもらっていたということだ。
これは丸の次を打つ打者の大きなアドバンテージの1つとなるはずだ。相手投手の状態、球筋、攻め方をじっくり観察して考える時間を作れる。これは丸が2番に入ろうと、3番に入ろうと、どの打順でも発揮できる目に見えない力のひとつなのである。