マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
熊野で再会した創志学園・西純矢。
投球術と変わらぬ野球小僧っぷり。
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![安倍昌彦](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/6/3/-/img_63c0172edf1a3eec5d5017836b5eb9301895.jpg)
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKyodo News
posted2018/12/03 08:00
![熊野で再会した創志学園・西純矢。投球術と変わらぬ野球小僧っぷり。<Number Web> photograph by Kyodo News](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/7/2/700/img_7226eac191a801b21fb3bb4033392b08153952.jpg)
甲子園にも強烈な爪あとを残した創志学園・西純也。来年が早くも楽しみだ。
2日目の投球はまったく違った。
試合会場になった「紀南高校」のグラウンドのネット裏には、両チームの選手の家族、関係者、近郷近在の野球ファンでびっしり。
みんな、西純矢を見に来ました、みたいな空気が漂う中、見せてやろうじゃないの! ぐらいの心意気はあったはず。
そんな気負いもはっきり見えて、しかし実際はなかなか思うに任せないピッチング。悶々とした思いもあったのだろう。4番を託されながら、内野ゴロで全力で走らず、ダグアウトに戻ってきて、ヘルメットもボトンと落っことしたままで……。
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大丈夫かな、と思っていた翌日、日曜日の羽黒戦で、ガラッと違う「西純矢」を見せてくれた。
抑制された力感。
そんな表現が近いだろうか。全身にあふれんばかりの気合いをにじませながら、それでいて、強く投げようとし過ぎない。速い球を投げようとし過ぎない。
だから、しっかり指にかかった速球が打者のスイングを圧倒する。きのうとは真逆のメカニズム。気分よさそうに腕を振って、連投の疲れどころか、今日のほうがぜんぜんフレッシュなピッチングだ。
最大の伸びしろは野球小僧なこと。
7回を0点に抑えた第1試合のピッチングもすばらしかったが、それ以上にこの剛腕の“伸びしろ”を目の当たりにしたのは、4番・レフトで出場した第2試合だ。
連係プレーの送球が逸れて、ショートの後方にボールが転がった。
三塁手が追う手もあった。その時だ。
「オレだー!」とばかりに突進してきたのが、レフトを守っていた西純矢だった。
深く守っていた。「サード、サード!」と遠くから指示して済ませてもいい位置だったかもしれない。
それがなんのためらいもなく、ボールが逸れた瞬間に、一目散にレフトから突っ走ってきたから驚いた。
迷いのない、猛烈な走りっぷりがすばらしかった。
なんだ、野球小僧じゃないか……。
うれしかった。野球選手の最大の伸びしろとは、まず「野球小僧」であること。
きのうはちょっと心配したが、これだったら、もうだいじょうぶ!
創志学園・西純矢、当たり前だが、まだまだいける!
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