マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
熊野で再会した創志学園・西純矢。
投球術と変わらぬ野球小僧っぷり。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKyodo News
posted2018/12/03 08:00
甲子園にも強烈な爪あとを残した創志学園・西純也。来年が早くも楽しみだ。
力感と球速のバランスが重要。
ちょっと苦しそうに投げてるかなと思っていたら、試合中盤になって、健大高崎打線が西投手の投球にタイミングを合わせ始めてきた。
今年の健大は例年のチームより小柄な選手が多いのに、西投手のいかにも重そうな目測140キロ前半を苦もなく外野の深いところに会心のライナーで運んでいく。結局、7回に4点を奪われて敗れたが、西投手の投球から、彼の課題とすばらしさ、その両面がはっきり見てとれた。
145キロ前後の力感で投じられる140キロ前半の速球。 これなら、打者のタイミングは合ってしまう。
逆に、140キロ前半の力感で145キロの速球ならどうなるか? 打者は間違いなく差し込まれる。
そんなに楽そうな腕の振りで、どうしてこんなに速いボールが……!
そんな“意外性”が、打者のスイングを圧倒する。その事実を実感してほしい。そのメカニズムを身につけてくれたら……さらに、難攻不落の快腕にレベルアップできる。
それには、体の外側に“ヨロイ”をまとうことよりも、内側のインナーマッスルを強化することだ。
必殺のスライダーをこの日は投げず。
この試合、創志学園・西純矢投手は、実は必殺兵器のタテのスライダーを投げていない。
「大きく育てたいからね。大きく育てないと、あれだけの大器なんだから」(長澤宏行監督)
変化球は、カーブとツーシーム、または横に動かすスライダーの3種類。
ツーシームに見えた右打者の胸元、膝元に沈む速い系のボールは、本人に訊けば「チェンジアップ」なのかもしれないが、コントロールさえ磨けば、タテのスライダー同様、この先でもう1つの“必殺”になれるボールになるはずだ。
夏の甲子園で、あれだけ全国のスラッガー、強打者たちのバットに空をきらせたタテのスライダーをおそらく1球も使わず、苦しみながらも試合中盤まではなんとか試合を作った西投手のピッチングセンスは、やはり見上げたものだ。