炎の一筆入魂BACK NUMBER
ショートに、ファーストに、外野でも。
広島の“何色にも染まる男”安部友裕。
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![前原淳](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/6/3/-/img_63c0172edf1a3eec5d5017836b5eb9301895.jpg)
前原淳Jun Maehara
photograph byKyodo News
posted2017/05/12 07:00
![ショートに、ファーストに、外野でも。広島の“何色にも染まる男”安部友裕。<Number Web> photograph by Kyodo News](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/d/8/700/img_d82c1ab6db119434437b0119aa117613135688.jpg)
5月4日の中日戦、1点リードで迎えた9回の表。ヒットで飛び出した大島洋平が、安部の守る一塁に戻るところでダブルプレーに仕留められ、ゲームセット!
その超ポジティブ思考がチーム全体を明るくする!
試合後、宿舎でプレーを見返した安部は思わず苦笑いした。
「映像で見たらめちゃくちゃ出過ぎていましたね。勉強しました」
素直に反省し、そして前を向いた。
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翌日すぐに“捕らないノック”で距離感を養った。転がっていくノックの打球を指さし、大きな声で「セカンッ!」と叫んでいた。
「僕は失敗しないと分からないのかも。みんなが思っている以上に、僕はハラハラしていましたよ」
チーム随一のポジティブ男は懸命に、汗とともに自分の中にあるネガティブな思考をも流し出している。
超ポジティブ思考はチームを明るく照らす。
田中広輔、菊池涼介、丸佳浩、野村祐輔ら、個性派揃いの同世代選手の中でもぶつかり合うことなく、うまく融合していることが今の広島の強さにつながっている。
「このままでは終わる。とにかくやるしかない」
安部は昔、やや尖った強い個性を放っていた。
ドラフト1位で入団した意地もあった。誰もが認める能力を持ち、二軍では申し分ない結果を残した。それでも思うように一軍で結果を残せない日々にいら立ちが募り、態度や表情、言葉にまで表れるようになった。
どこかで不遇と感じていたのかもしれない。
好転しないままシーズンだけが過ぎ、2013年は一軍での試合出場は3試合に終わった。気づけば同期の丸だけでなく、菊池や田中も一軍で着実に自分の居場所を見つけていた。
迎えた同年秋季キャンプ。
危機感が、自分自身を変えるきっかけを与えた。
「本当に当時の自分はダメだった。このままでは終わる。あれこれ言わず、とにかくやるしかないと思った」
自分が変わらなければ、このままで終わる。
ならば変わるしかなかった。