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ショートに、ファーストに、外野でも。
広島の“何色にも染まる男”安部友裕。 

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前原淳

前原淳Jun Maehara

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photograph byKyodo News

posted2017/05/12 07:00

ショートに、ファーストに、外野でも。広島の“何色にも染まる男”安部友裕。<Number Web> photograph by Kyodo News

5月4日の中日戦、1点リードで迎えた9回の表。ヒットで飛び出した大島洋平が、安部の守る一塁に戻るところでダブルプレーに仕留められ、ゲームセット!

その超ポジティブ思考がチーム全体を明るくする!

 試合後、宿舎でプレーを見返した安部は思わず苦笑いした。

「映像で見たらめちゃくちゃ出過ぎていましたね。勉強しました」

 素直に反省し、そして前を向いた。

 翌日すぐに“捕らないノック”で距離感を養った。転がっていくノックの打球を指さし、大きな声で「セカンッ!」と叫んでいた。

「僕は失敗しないと分からないのかも。みんなが思っている以上に、僕はハラハラしていましたよ」

 チーム随一のポジティブ男は懸命に、汗とともに自分の中にあるネガティブな思考をも流し出している。

 超ポジティブ思考はチームを明るく照らす。

 田中広輔、菊池涼介、丸佳浩、野村祐輔ら、個性派揃いの同世代選手の中でもぶつかり合うことなく、うまく融合していることが今の広島の強さにつながっている。

「このままでは終わる。とにかくやるしかない」

 安部は昔、やや尖った強い個性を放っていた。

 ドラフト1位で入団した意地もあった。誰もが認める能力を持ち、二軍では申し分ない結果を残した。それでも思うように一軍で結果を残せない日々にいら立ちが募り、態度や表情、言葉にまで表れるようになった。

 どこかで不遇と感じていたのかもしれない。

 好転しないままシーズンだけが過ぎ、2013年は一軍での試合出場は3試合に終わった。気づけば同期の丸だけでなく、菊池や田中も一軍で着実に自分の居場所を見つけていた。

 迎えた同年秋季キャンプ。

 危機感が、自分自身を変えるきっかけを与えた。

「本当に当時の自分はダメだった。このままでは終わる。あれこれ言わず、とにかくやるしかないと思った」

 自分が変わらなければ、このままで終わる。

 ならば変わるしかなかった。

【次ページ】 「覇気」は東出コーチと安部の合言葉に。

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