炎の一筆入魂BACK NUMBER
ショートに、ファーストに、外野でも。
広島の“何色にも染まる男”安部友裕。
posted2017/05/12 07:00
text by
前原淳Jun Maehara
photograph by
Kyodo News
今年も広島打線は活発だ。12球団トップの得点力でクリス・ジョンソンや中崎翔太を欠く投手陣を支えている。新井貴浩やブラッド・エルドレッドをも簡単にスタメンから外すなど、打線の組み替えが見事にハマッている。不動のタナキクマルの上位打線や新4番に定着した鈴木誠也が新打線の顔。
そして強い個性を発揮する選手たちの中で広島打線に柔軟性を与えているという意味で、何色にも染まれる安部友裕の存在も大きい。
ここまで、主力級の出場数を誇る。
特筆すべきは、その起用の幅だ。
打順はここまで7番を軸に、2番、6番……そしてクリーンアップの一角である5番も務めた。4つの打順でいずれも3割超の打率を残す適応力の高さを示す。
より起用の幅を広げている理由は、守備にある。
ファーストミットと外野用を常に持ち歩くショート!?
主戦場のサードだけでなく、ファーストでも先発出場を果たし、菊池涼介欠場時にはセカンドでも先発出場した。練習では外野ノックを受けることもある。
本職はショートだ。
本人もこだわりがある。
それでも本職以外のポジションで出場機会を増やし、今ではファーストミットと外野用グラブを常に持ち歩いている。三塁、一塁、外野の3ポジションは視界も角度も動きも全く異なる。現状にも明るく、「三刀流です」と笑い飛ばす。
初めて“捕らないノック”を見たのは4月12日、巨人戦(東京ドーム)前の練習だった。
ファーストでノックを受けていた安部は、ひたすら一、二塁間の打球を見送っていた。理由は前日11日にある。
6回裏からファーストに就いた安部は7回、亀井の一、二塁間への打球を追いすぎたことで、菊池が好捕しても一塁に戻りきれなかった。ほかの内野にはない動きで、本職でない一塁手には難しい判断といえる。