“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
欧州クラブに挑戦する18歳の光と影。
渡邊凌磨、ブンデスでの今を語る。
posted2017/02/28 07:00

インゴルシュタットは2004年に誕生した新しいクラブ。昨季から初めて1部で戦うことになったこの若いチームで、渡邊は居場所を見つけることができるか?
text by

安藤隆人Takahito Ando
photograph by
Takahito Ando
2015年9月。18歳になるひとりの若者が並々ならぬ覚悟を持って日本を飛び出し、単身ドイツの地に降り立った。
ブンデスリーガのクラブ「インゴルシュタット」に所属する渡邊凌磨は、群馬の名門・前橋育英高校で3年間を過ごし、高2の時にはU-17日本代表としてU-17W杯(2013年、UAE大会)に出場した選手だ。高いボールコントロール技術とシュートセンスでチーム最多の3ゴールを叩き出すと、高3の最後の高校選手権ではチームを準優勝に導く活躍を見せ、高校サッカー界のスター選手の1人となった。
卒業後は早稲田大学へと進学。今度は関東大学サッカー界のスター候補として、華々しくデビューする……はずだった。
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実はその頃、彼の中に誰も止めることが出来ない、別の覚悟が芽生え始めていた。
なぜか目標と夢が見えなくなった……。
「僕自身、『サッカーで成功したい』という欲が凄く強くて。それも、海外でチャレンジしたいという想いが強かった。
大きかったのはU-17W杯でした。
大会に出場して感じたのは、僕は日本代表ですから当然その組織の中で生かされているんだな、ということ。じゃあ、もし僕が1人で海外のチームに入ったとき、どれだけ出来るのかと問われたら果たして……と、疑問に感じたんです。その疑問がどんどん膨らんでいって、『1人で海外に行って勝負したい』という気持ちが強くなっていって。
一方では大学進学も決まっていて。でも、いざ大学に入ってみたら、具体的な自分の目標が立てられない自分がいたんです。『大学に入学したはいいけど、これから俺どうしよう』と、すべてが漠然としてしまって、未来がぼやけてしまって……」
彼は海外でチャレンジしたい気持ちを抱えたまま、大学へ進んでしまった。だが、あるきっかけが、その秘めたる夢の実現を加速させることになった。