プロレスのじかんBACK NUMBER
IWGPジュニア王者KUSHIDAは、
なぜ“ナイフ”を研ぎ続けるのか?
text by
井上崇宏Takahiro Inoue
photograph byEssei Hara
posted2016/05/02 10:30
昨年は「ベスト・オブ・スーパー・ジュニア」を初制覇しているKUSHIDA。世界の次世代ジュニア界を牽引する。
だからこそ――原点に戻った。
そして昔から変わらないことがある。
ナイフを研ぎ続けていると、他のプロレスラーからナメられない。
どこかで相手を信用しきってはいないというプロレスラーの心性。試合の主導権争いから、試合後に相手が出すコメントに至るまで、いまだにナイフはその効力を発揮する。
「おい、今フィニッシュで使ってるホバーボードロックって、あれ、俺のアームロックだよな?」
「違いますよぉ。あれは旋回式だからボクのオリジナルです」
桜庭からもそうやって冷やかされるが、本来、新日本の入門規定には満たなかったKUSHIDAが、新日本に移籍できたこと、そしてそこで勝ち上がっていくことができたこと、あらためてその理由を突き詰めていくと、「関節技というナイフを持っていたから」という答えが自身の中で導き出されたのかもしれない。
だから今、また原点に帰った。
原点を磨いていた当時の、流した汗と葛藤はまったく無駄ではなかった。
ヘビー級の闘いにはないグラウンドレスリング、総合格闘技や柔術の技術を出せる土壌が新日本ジュニアにはある。その技術も持っている王者の闘いは、IWGPヘビー級選手権とは違うものが観られる。そして、世界中のプロレスシーンからナメられることも、ない。