プロレスのじかんBACK NUMBER
IWGPジュニア王者KUSHIDAは、
なぜ“ナイフ”を研ぎ続けるのか?
text by
井上崇宏Takahiro Inoue
photograph byEssei Hara
posted2016/05/02 10:30
昨年は「ベスト・オブ・スーパー・ジュニア」を初制覇しているKUSHIDA。世界の次世代ジュニア界を牽引する。
中邑「あれ、どうしてこんなところにいるの?」
メキシコでプロレスデビューを果たした。
デビュー戦はタッグマッチで、もはやパートナーも対戦相手の名前も憶えていないが、最後はムーンサルト・プレスで自分が勝負を決めた。異国の地で緊張することも特になく、「ああ、夢が叶ったな」と思った。
現地では新日本から遠征をしてきた棚橋弘至、中邑真輔、邪道、外道らと出会うが、同じく学生時代から格闘技の活動を行なっていた中邑からは「あれ、高田道場の櫛田くんだよね? どうしてこんなところにいるの?」と驚かれた。
10戦以上をこなして帰国。その後はハッスル、SMASHに所属。そこでも活躍が認められ、2011年4月、新日本プロレスに移籍を果たす。
今もグレイシー柔術アカデミーに行き、最新技術を学ぶ。
IWGPジュニアヘビー級王者となった現在も、KUSHIDAは関節技というナイフを研ぎ続ける。
オフの日は柔術の道場に出稽古に行き、海外遠征中も現地の、たとえばニューヨークやフィラデルフィアのグレイシー柔術アカデミーに練習に行く。プロレスのチャンピオンということで、相手が必要以上にガツガツやってくることもザラだ。そこで怪我をしてしまうと試合ができなくなるというリスクはあるが、その緊張感もたまらない。
単純に強い人とスパーリングをしてみたいという純粋な欲求。柔術の黒帯クラスには一本取られることだってあるが、まったくかまわない。動いてナンボ、知らない技術を学んでるのだから当然のことだ。
「自分が総合をやっていたのはもう10年前のこと。総合の技術にしても柔術の技にしても、新しいものがどんどん出てくるんです。当時はオモプラッタが最新の技だったのが、そこからトライアングルチョークや、ヒザやスネで極めるような技がどんどん出てきたりとか。スパーリングをしてみると、自分がオールドスクールな技しか持っていないことに気づくんです。だから新しい技術でころっとやられちゃう」
古くからのプロレスファンからは「昔と比べて、今のプロレスは……」なんて言われることもあるが、そうして格闘技の技術の進化に触れると、プロレスだって進化していて当然なんだよなと実感する。だからまったく気にならない。