濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
“学プロ上がり”の“どインディー”。
ガッツワールドが志すプロレスの王道。
posted2016/05/15 11:00
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Yukio Hiraku
5月8日、プロレス団体ガッツワールドが後楽園ホール大会を開催した。
プロレス団体が後楽園で興行を打つのは当たり前――ではない。2004年に旗揚げしたガッツワールドの観客動員は通常、100人から300人ほど。ごく小規模な、いわゆる“どインディー”団体であり、後楽園大会開催もまだ2度目なのだ。
ガッツワールドは、ガッツ石島ら学生プロレス出身者たちが創設した団体だ。しかも彼らには、下積みの期間がなかった。
「学生プロレス上がりが自分で勝手に名乗ってプロレスラーになっちゃったという(笑)。団体旗揚げって、どこかの団体で修行したレスラーが独立してやるもんなんですけど」(石島)
当然、風当たりは強かった。他の男子団体から相手にされず、専門誌には掲載されない。女子プロレスラーにミックス(男女混合)マッチで参戦してもらうことで、少しずつ業界内での信用を得ていくしかなかった。
ただ、そこで卑屈になることもなかった。新弟子修行を経験していない代わりに、彼らは最初から“団体を背負う”責任感を持ってやってきた。練習と試合だけでなく、広報活動や営業も自分たちの仕事。「それはそれで、他の団体とは違う厳しいハードルを越えてきたんです」と主力選手であるダイスケは言う。そういう選手たちがたどり着いた後楽園大会だからこそ、その意味も重い。
2014年からコツコツ積み上げてきた名勝負の数々。
2014年10月、旗揚げ10年で後楽園初進出。そこから、シングル王座戦で名勝負が連発されることになった。
同年12月の新木場1st.RING大会では吉野達彦とダイスケが60分フルタイムの死闘を演じ、翌年3月にダイスケがベルトを巻くと、7度の防衛戦すべてにおいて大きなインパクトを残している。
今回の後楽園大会でも、メインのタイトル戦は33分32秒の大激闘。
挑戦者・ミスター雁之助がダイスケを下して新王者となった。フィニッシュのファイアーサンダーに至る大技ラッシュの迫力は凄まじいものだったが、それ以上に印象深いのは前半の攻防だ。