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<レジェンドが語るクラシコ> ファビオ・カンナバーロ 「W杯決勝並みの興奮と熱狂がある」 

text by

宮崎隆司

宮崎隆司Takashi Miyazaki

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photograph byAFLO

posted2014/10/23 11:30

<レジェンドが語るクラシコ> ファビオ・カンナバーロ 「W杯決勝並みの興奮と熱狂がある」<Number Web> photograph by AFLO

印象に残るのは、あの“人間ではないはずの選手”。

――では、レアルの宿敵バルサを語ろうとする上で絶対に外せないこの質問を。君が戦ったバルセロナの選手で、もちろんひとりのディフェンダーとして、もっとも強く印象に残っているのは誰なのか?

「そして君はさらに『平凡な答えはNG』とも言うんだろう? でもこの問いに対する答えは、残念ながら平凡にならざるを得ないよ。なにせあのチームには“人間ではないはずの選手”がひとりいるんだからね。

 というわけで、期待に添えなくて申し訳ないんだが、僕の答えはやはり、リオネル・メッシ。彼を超えるインパクトを僕に与えた選手は他にひとりとしていない。

 クラシコで相見える数年前、たしか'04年の夏だったかな、当時の僕はユベントスにいて、夏のプレシーズンマッチで当時まだ20歳にも満たない17、18歳の少年だったメッシと対戦したんだ。もうその時から既に手に負えない選手でね。ボールを止めてから次に移る動きの速さ、あれは本当に異次元というしかない。『オイオイ、こんなヤツがいるのか……』と呟きながら、恐怖さえ感じたものだよ」

バルサとレアルを隔てる壁は、無数にある。

――そのメッシを輩出するバルセロナと、一方のレアル。何が最も両者の違いを際立たせているのだろうか?

「これもまた難しい質問だね。とにかく、まず最初に言うべきは、この両者を隔てる壁は一枚や二枚じゃないということ。それこそ無数にある。さっきも少し触れたように、背景にある思想も文化も歴史も民族も、すべてが異なるのがレアルとバルサなのだからね。

 その上で、きっとこう言えるんじゃないだろうか。レアルとは国王のクラブにして首都マドリードの象徴。対するバルサは、スペインにおける独立派たちの象徴にして最も才能溢れる者達の集団であると。つまり、バルサは言ってみれば庶民のクラブにして民主主義の象徴であって、対するレアルは言わば中央権力の象徴ともいうべきなのかな。要するに、レアルとはスペイン。バルサとは反スペイン。

 そしてもちろん、実際のプレースタイルという意味でも、もはや誰もが知る通り、両者は真っ向から対立する存在にある。レアルは敵を力でねじ伏せることを理想とし、バルサはそのサッカーにより芸術性を求め続ける。

 事実、ここでの基本的な思想の違いが、ここ数年にみる実績は別としても、長い歴史の中で総じて『レアル優位』という史実を作り上げた要因ということなんだろう。

 もちろん昨今では商業的な意味で両者には似通った部分もあるのだけど、とはいえその本質的な部分、つまりサッカーそのものの捉え方というところでは対極であり続けている。むしろここ数年においてさらに両者の対立は先鋭化していると言えるのかも知れないね。だからこそ面白い。彼らの戦いから目を離すことはできないよ。今季もまた世界中の目がベルナベウに、そしてカンプノウに注がれるのだろう」

【次ページ】 「マドリードはまさにスペインそのものだ」

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