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<レジェンドが語るクラシコ> ファビオ・カンナバーロ 「W杯決勝並みの興奮と熱狂がある」 

text by

宮崎隆司

宮崎隆司Takashi Miyazaki

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photograph byAFLO

posted2014/10/23 11:30

<レジェンドが語るクラシコ> ファビオ・カンナバーロ 「W杯決勝並みの興奮と熱狂がある」<Number Web> photograph by AFLO

「最も強く印象に残るシーンは……」

――では、その「クラシコ」で最も強く印象に残っているシーン、プレーは一体どれなのだろうか。例の'09年の2-6という大敗が見る者には鮮烈な記憶として残るのだが……。

「いや、どれかひとつのシーンを選ぶというのは不可能だよ。それこそすべてのシーン、すべてのプレーが克明に刻まれているのだからね。

 だから、この問いに対する僕の答えはこうなる。最も強く印象に残るのは、敵の一人としてはじめて乗り込んだカンプノウで見た光景。あれはまさに文字通り衝撃的だった。鳥肌が立つなんてもんじゃない。ある種の恐怖を感じたとも言えるのかもしれないね。

 もちろん、それと同じことは例えばジャンルカも感じているんじゃないかな。きっとアイツは敵として始めて乗り込んだベルナベウで少しどころか足をわなわなと震わせていたはずだよ(笑)。

 スペイン人が言うところの『miedo escenico』、その真の意味を理解した瞬間だったと思うね(miedo escenico=スペインで『超満員のスタジアムが敵を威圧する、その様を表す』言葉)」

「もう本当にあれはプレイステーションのレベル」

――今一度、例の「2-6」について苦い記憶を語るとすれば?

「まぁもう随分と昔の話だからね。とはいえ、やっぱりアレはキツかったよ。しかも敵地ではなくマドリードで大敗を喫したんだからね。

 ただ、忘れてならないのは、当時のあのバルサが異常なほど強かった、という最も重要な事実だと思うんだよ。

 とにかくアイツらは巧かった。よく喩えて言われるけど、もう本当にあれはプレイステーションのレベル、むしろバーチャルな世界よりも遥かに強かったんじゃないかと思えるくらいだった。それこそレアルが相手でも試合にならないほどだったんだからね。よくもまぁ、あんなにも速いパス回しができるものだよ(笑)。

 その2-6の試合については、今では幸い誰ひとりとして覚えていないであろう、恥ずかしい話があってね。

 他ならぬこの僕が、例のクラシコを前にして、新聞の取材にこんな風に言ってたんだ。『どんなにバルサが強いといっても、対レアルは必ず拮抗した試合になる。まさかレアルが大量失点を喫するなんてことは絶対にあり得ない!』と。ところが実際は周知の通りなわけで、あの試合を終えた僕が心の中で呟いていたのは、『一体なんてことを言っちまったんだ……』ということさ(笑)。

 ただ、心優しいスペイン人はそんな僕の言葉をあげつらうようなことはしなかった。幸いなことにね。一方で、もしもこれがイタリアでの出来事だったら、しかもそれがナポリでの出来事だったら、まぁ軽く5年は表を歩けなかっただろうね(笑)」

【次ページ】 印象に残るのは、あの“人間ではないはずの選手”。

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