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<レジェンドが語るクラシコ> ファビオ・カンナバーロ 「W杯決勝並みの興奮と熱狂がある」
posted2014/10/23 11:30
text by
宮崎隆司Takashi Miyazaki
photograph by
AFLO
過去、幾度となく名勝負を繰り広げてきたスペインの二大ビッグクラブ、
レアル・マドリーとバルセロナの宿命の一戦のことだ。
そのピッチに立った選手たちは、W杯優勝者やバロンドール受賞者など、
いずれも劣らぬ名選手たちばかり。そんな彼らにとってもなお、
「クラシコ」はやはり別格なのだという。彼らが伝統の一戦で感じたものとは、
一体なんだったのだろうか?
Number863号『レジェンドが語る 愛と憎しみのクラシコ』より、
イタリア代表としてW杯も制覇した世界最高のDF、ファビオ・カンナバーロの
インタビュー記事。雑誌に収めきれなかった完全版を公開します。
――君がレアルに移籍したのはW杯制覇の直後。当時世界最強のDFと言われたカンナバーロは、世界最高峰の舞台とされる「クラシコ」に何を感じていたのだろうか。さすがの君でもやはり足を震わせたのか? やはり他とは違う特別な試合であったのか? また、そうであるならば、どういったところが特別だったのだろうか。
「幸いなことに足を震わすことはなかったよ(笑)。とはいえ、もちろん『特別な試合』だった。当然だよ。イタリアで、ただTVで観るだけでも他とは明らかに違う試合だったからね。
でも、ベルナベウであれカンプノウであれ、実際にあのクラシコのピッチに立つことの意味や、そこで何を感じたかを言葉にするのは、随分と時間が経った今にしても本当に難しいんだよ」
「『W杯決勝』に近いほどの興奮と熱狂がクラシコにはある」
「とにかく、僕のサッカー人生において絶対に忘れられない思い出なのは間違いないね。もちろんあの、'06年W杯決勝のベルリンの夜と比べることはできないとしても、『エル・クラシコ』で受けた衝撃が件のW杯決勝で受けたものとかけ離れているかと言えば、そうでもないんだ。
サッカー選手すべての夢である『W杯決勝』にさえ近いほどの興奮と熱狂、そして緊張がクラシコにはある。
その上で、他の試合との違いについて触れれば、とにかく選手ひとり一人が背負う重圧が桁外れだということだね。もちろんこの僕にとってもそうだった。それこそW杯決勝という、究極的な重圧の中で戦った経験を持つ僕でさえ、初めてのクラシコには興奮を抑えることはできなかった。
さっきはそんなことはないと言ったけれど、実を言えばわずかとはいえ足を震わせていた……と白状しようか(笑)。
それから、何よりも感動的なのはピッチを囲むスタンドの美しさ。しかもそこにはイタリアのダービーと違って危険はない。10万の魂がスタジアムを揺らすあの瞬間を僕は生涯忘れないだろう。
クラシコの価値は、スペインだけでなく欧州全土でも群を抜く。つまり全世界を見渡しても、紛れもなく最高峰の試合がレアル対バルサなんだ。
世界で最も優れた才能が一堂に会す舞台という意味は、ここ数年のバロンドール受賞者がロナウドとメッシの2人で続いていることだけでも十二分に理解されるはずだよ。
もっとも、バロンドールということで言えば、ロナウドやメッシと比べた場合、一体この僕は何なんだ? ということになってしまうんだけどね(笑)」