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<レジェンドが語るクラシコ> ファビオ・カンナバーロ 「W杯決勝並みの興奮と熱狂がある」 

text by

宮崎隆司

宮崎隆司Takashi Miyazaki

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photograph byAFLO

posted2014/10/23 11:30

<レジェンドが語るクラシコ> ファビオ・カンナバーロ 「W杯決勝並みの興奮と熱狂がある」<Number Web> photograph by AFLO

他の国のダービーとは何が違うのか?

――イタリアにもミラノダービー、イタリアダービーなど多くの熱いダービーがある。そういった試合と比べて、スペインの「クラシコ」は具体的に何が違うのか? また、仮にあるとすれば、両者にある共通点とは?

「何が違うか……。これもまた言葉にするのは難しいんだけど、まぁ結局のところは『敗戦の重さ』ということになるんだろうね。

 それこそ僕がいた当時のレアルがホームで2-6で敗れた'09年がそうであったように、正直、あれほど敗北の重さをひとつの試合に感じたことは過去になかったし、それ以降も一度としてないよ。

 あえて記憶を辿れば、僕がまだ少年だったころのナポリ、あのマラドーナがいた時代、負けることが本当に稀だった『マラドーナのナポリ』が試合を落とした際に、ナポリ全体が深い落胆に沈む情景が匹敵するだろうか……。そのナポリに見たシーンはマドリードでの風景と同じ色で、重なるようにして僕の心の中に映し出されるんだよ。きっとその敗北の重さは、バルセロナの人々にとっても同じなんだと思う」

「クラシコの場合は規模が違うんだよ、桁違いにね」

「そして、イタリアにおけるダービーとの違いという意味では、ミラン対インテルもユベントス対インテルにしても、もちろん物凄い重圧と痛いほどの緊張に苛まれる試合ではあるんだけど、結局のところは1国の中の2大都市が争うという構図に留まるんだ。

 それに対して、クラシコの場合は規模が違うんだよ、桁違いにね。レアル対バルサは単にマドリード対バルセロナの2大都市の争いという枠を超えて、欧州どころか世界中のサッカーファンを二分するスケールなのだから、そもそも他とは比較の対象にすらならないと言えるんじゃないかな。

 相反する哲学と、異質のサッカーが激しくぶつかるレアル対バルサは、同時に異なる文化と歴史、そして相反する民族が緑の芝の上で衝突し、互いに覇を競う場所でもある。『他とは違う』『特別な試合』でないはずがないということだね」

――バルセロナというチーム、また所属選手に対しては他チームとは違った特別な感情はあったのだろうか?

「純粋に相手をリスペクトするという思いだけだね。もちろんチーム対チームとしては強烈なライバル意識があるとしても、いざ選手対選手という個のレベルでは、明らかにそういったライバル意識とは異なる感情を抱いていた、というのが正直なところだよ。

 たとえば、“敵”だったジャンルカ(・ザンブロッタ)にしても、リリアン(・テュラム)に対してもそうさ。

 前者はかつて共に世界を制した仲間であって、後者は逆にその世界制覇を懸けて戦った仲だからね。たとえ身につけるシャツの色は違っていたとしても、そんな彼らと再び同じピッチに立てるという奇跡を、しかもそれが『クラシコ』の舞台であるという奇跡を、僕は神に感謝するより他なかった。もちろん、あの紛れもなき世界最高峰の舞台にイタリアを代表して立てるという誇りもまた僕は強烈に抱いていた」

【次ページ】 「最も強く印象に残るシーンは……」

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