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<レジェンドが語るクラシコ> ファビオ・カンナバーロ 「W杯決勝並みの興奮と熱狂がある」 

text by

宮崎隆司

宮崎隆司Takashi Miyazaki

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photograph byAFLO

posted2014/10/23 11:30

<レジェンドが語るクラシコ> ファビオ・カンナバーロ 「W杯決勝並みの興奮と熱狂がある」<Number Web> photograph by AFLO

「マドリードはまさにスペインそのものだ」

――では、サッカーそのものとは離れた部分、つまりスタジアムや観客の雰囲気といったところでも「クラシコ」は他の試合とまったく違うものなのだろうか?

「僕はナポリの出身だからね、確かにバルセロナの町並みや雰囲気に懐かしさに似た感覚を抱くのは事実だよ。でもやっぱりどちらが好きかと問われれば断然マドリードだね。マドリードがまさにスペインそのものであるのに対して、バルセロナはそうではないからね。

 ただ、では両者を支えるファンの間にも違いがあるかと言えば必ずしもそうではないと思うんだ。もちろん熱さという意味では多少の違いがあるんだろうし、きっとマドリードの方が少しばかりその温度で上回るのだろうけど、サッカーを心の底から愛すという意味ではバルサのファンもまったく同じだからね。それに、両者とも本当に良くサッカーを知っている。

 その上で、やはり『レアル派』の僕としては、ベルナベウの素晴らしさはカンプノウのそれを格段に上回っていると言っておかなければならない。ベルナベウとはまさに聖なる場所。あの空間に足を踏み入れるということはそのままレアルへの信仰を意味するのだからね」

レアルは常にレアルであり続ける。

「マドリードの人々は、それこそ闘牛の伝統さながらに、各人が各々の儀式を経てスタジアムに入っていく。そして試合が終われば例えば“Avenida Brasil”のエリアでその余韻を楽しみ、またはあの(ファビオ・)カペッロお気に入りの伝説のレストラン“Tchixtu”で最高の料理を楽しんだり……。あるのは上質のサッカーだけじゃない。すべてが『エル・クラシコ』には揃っているんだ」

――当時のレアルと今のレアルはどんなところが変わり、また、たとえ時代は変わろうとも、どんなところが変わらずに受け継がれていると思う?

「レアルは常にレアルであり続ける。そう、それこそどんなに時代が移り行こうとも彼らは世界最高にして最強のクラブであり続ける。正確には、その義務を負い続けると言うべきなんだろう。

 そして今、長きに渡って彼らの目標であった10度目のCL制覇を成し遂げてみせたことで、レアルと『他』を隔てる壁はより一層その高さを増したと言える。大切なのは勝ち続けること。しかも圧倒的な力の差を誇示しながら。これこそがレアルのレアルたるゆえんなのだからね。長い伝統と実績に裏打ちされたクラブ。世界で最も格式高いクラブ。一流と呼ばれる選手達のすべてが一度はそのシャツに袖を通したいと願うクラブ。それがレアルだ。わずか3シーズンと短かったとはいえ、そのクラブの一員であれたことを僕は心の底から誇りに思っているんだ」

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