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ドラフト有力候補59人を徹底検証。
各球団の1位指名予想を総まとめ!
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2013/10/14 08:03
9月27日、神奈川県高野連にプロ志望届を提出した桐光学園・松井裕樹。複数球団からの1位指名が予想されるが、ボールに書かれた「夢」を引き取るのはどのチームになるか。
「今年は小粒」という前評判は正しいか?
10月24日に行われるドラフト会議で1位候補に挙げられているのが松井裕樹(桐光学園)、杉浦稔大(国学院大)、大瀬良大地(九州共立大)、石川歩(東京ガス)、吉田一将(JR東日本)、浦野博司(セガサミー)の投手陣と、森友哉(大阪桐蔭)、梅野隆太郎(福岡大)、渡辺諒(東海大甲府)の野手陣である。
12人に3人足りないのは承知している。マスコミが「今年は小粒」「1位候補が12人揃わない」と書くように、今年は上位候補と言われる選手が少ない。
これには説明を要する。新聞や雑誌の記者がスカウトに取材して候補選手の名前が出揃い、そのとき聞いたスカウトの評価によって上位候補、中位候補、下位候補くらいのざっくりした格付けが行われる。総じてスカウトは投手を高く評価するので、投手の候補が多い年は「豊作」、野手の候補が多い年は「小粒」、ひどいときには「不作」と書かれる。野球は投手と野手のバランスが重要なので投手の候補が少なくても野手に逸材が多ければ「小粒」にはならないはずだが、そういう評価にはならない。
今年は投手の上位候補が少ない。とくに高校生投手は大谷翔平、藤浪晋太郎がいた昨年と比較して体格的スケールも「小粒」。しかし、高校生野手は数も質も充実している。
松井裕樹は別格だが、続く存在は……。
選手権後に行われた18U野球ワールドカップ(以下18U選手権)では森が最多打点とベストナインに輝き、20打数以上では森が打率4割超え、内田靖人(常総学院)、渡辺、吉田雄人(北照)、森龍馬(日大三)、熊谷敬宥(仙台育英)が3割超え、園部聡(聖光学院)もチーム2位の打点7(打率.267)を挙げるなど6位に終わった昨年を上回る成績を収めている。そういう打高投低の傾向が「主な候補選手」の顔ぶれや人数によく表れている。
高校生投手は松井1人が飛び抜けた存在で、それに続く選手が少ない。それに対して社会人は吉田をはじめとして浦野、石川が盤石の1位候補で、東明大貴(富士重工業)、柿田裕太(日本生命)も1位をうかがえる好投手。大学生も九州大学球界の本格派・大瀬良を筆頭に岩貞祐太、西宮悠介の横浜商大コンビなど地方勢が元気。それに対して東京六大学、東都大学リーグ勢には人材が少ない。
つまりマスコミ人気の高い投手の層が全体的に薄く、高校生と東京六大学・東都リーグ勢に人材が少ないことが「小粒」という評価につながっている。こういう状況に流されず“実質”に目を向けた球団が好素材をゲットし、近い将来実りを手にすることができると思っている。
さて、各12球団が補強すべきポジションと1位入札候補は誰なのか考えていこう。