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“下剋上”でCSファイナルへ臨む広島。
「陰のMVP」菊池涼介の2つの顔とは。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2013/10/15 12:00
武蔵工大二高時代は三塁手としてプレーし、中京学院大時代は遊撃手だった。プロ入りしてからは、二塁手として荒木雅博(中日)の補殺記録を更新する日本記録を樹立した。
クライマックスシリーズ(CS)での躍進を、周囲は「下剋上」と形容する。
2位・阪神とのファーストステージ。3位・広島の戦いぶりは、実に見事だった。
初戦はキラの勝ち越し3ランを含む3本塁打などで8対1の完勝。先発の前田健太も7回1失点とエースとしての役目を果たした。第2戦は初回に先制を許したものの、6回に逆転すると7回以降も着実に点差を広げ7対4で快勝。ファイナルステージ進出を決めた。
2試合で24安打、15得点を叩き出した打線にスターターを任された前田健、バリントンの安定感。広島がシーズン2位の阪神を凌駕できた理由を挙げればきりがない。
ただ、ひとつだけ確かなことが言える。
短期決戦においては、必ず「起点」となる選手が出現するものだ。その存在がチームの流れを作り、勝利を手繰り寄せる。
広島にとって、ファーストステージでの大きな起点となったのが菊池涼介だった。
7打数4安打という数字以上に光った臨機応変さ。
東出輝裕の故障によりレギュラーに抜擢された2年目の若手。セカンドとしてセ・リーグ記録の528補殺を達成するなど守備に定評がある。その一方で、打率2割4分7厘、11本塁打、57打点と打撃面では取り立てて目立った数字はない。注目すべき点と言えば、リーグトップの50犠打くらいだろうか。
その菊池が、CSファーストステージで爆発した。
2試合で7打数4安打。圧巻の数字は言うまでもない。そして、それ以上に光ったのが、菊池の臨機応変な攻撃姿勢だった。
奇しくも、広島と対峙することとなった阪神の西岡剛は、ロッテ時代や第1回WBCで2番を任された経験を踏まえ、このような「2番打者論」を説いていたことがある。
「2番バッターが一番しんどいと思うんですよね。1番は迷わず積極的に打っていけるけど、2番は1番の結果を踏まえながら考えてバッティングをしないといけない。初球から打つのかピッチャーに球数を投げさせて粘るのか? そういった状況判断が2番には求められてくるから難しいんです」
ファーストステージでの2試合、菊池は2番として異なる2つの顔を披露した。