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星稜の因縁、安楽の球速、名将の策。
甲子園に渦巻く野球観の相克を見よ。 

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中村計

中村計Kei Nakamura

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photograph byKyodo News

posted2013/08/07 11:50

星稜の因縁、安楽の球速、名将の策。甲子園に渦巻く野球観の相克を見よ。<Number Web> photograph by Kyodo News

7月26日の愛媛大会で、安楽智大は自己最速の157キロを記録。187センチ、85キロの体格をいかし、甲子園でさらなる記録更新を目指す。

盤石の日大三。唯一のポイントになるのが投手力。

 2010年に春夏連覇を達成した興南(沖縄)は、甲子園で智弁和歌山、帝京(東東京)、東海大相模(神奈川)といった全国を代表する強打のチームと対戦している。それでも捕手の山川大輔は、打力に関しては春の決勝で対戦した日大三が群を抜いていたと話す。

「衝撃的でしたね。すごい振ってくるし、足もある」

 エースの島袋洋奨も、やはり日大三がいちばん印象的だったと語った。

「スイングも、体格も、驚かされた」

 毎夏、打線はきっちり仕上げてくる日大三の結果を左右するポイントはただひとつ、投手力である。2001年夏に優勝したときは近藤一樹、千葉英貴という二枚看板がおり、2011年は吉永健太朗という絶対的なエースがいた。今年は身長167センチと小柄だがパワフルで安定感抜群の大場遼太郎がいる。この夏の日大三も、手がつけられなくなる恐れがある。

「怖さを覚える前に勝つか、怖さを克服して勝つか」

 奇しくも関東を代表する強豪2校の監督から、地方大会開幕前に「怖い」という言葉を聞いた。

 ひとりはこの春、就任22年目にして初めて日本一をつかんだ浦和学院(埼玉)の森士監督だ。

「優勝する道のりは2つ。怖さを覚える前に勝つか、怖さを克服して勝つか」

 言うまでもなく森は後者だった。

 ところが埼玉大会開幕直前、実はこうもらしていた。

「初戦で負けるかもしれない。勝ってまた怖くなった」

 追われる者の恐怖。また種類の違う怖さなのかもしれない。

 一昨年秋に名将・木内幸男からバトンを引き継ぎ、常総学院(茨城)の野球部監督に就任した佐々木力はこの夏、3季連続出場がかかっていた。

「去年は怖い物知らずでイケイケでやれた。でも今年は負ける怖さがある。勝とうとする采配じゃなくて、これで負けたらしょうがないというような采配に走りそうな気がする。そこをどう乗り越えるかでしょうね」

 そんな中、怖さを熟知した森と、怖さを初めて覚えた佐々木は、いずれも県大会を突破した。

【次ページ】 注目投手・安楽智大は「自己最速をねらう」。

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