詳説日本野球研究BACK NUMBER
今年は“小粒”だなんて言わせない!
開幕直前、甲子園の注目選手たち。
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2013/08/07 10:30
甲子園入りし、守備練習で鋭い送球を見せる大阪桐蔭・森友哉。大阪桐蔭も登場する大会初日8日は18歳の誕生日。怪我を負いながらも大阪大会を勝ち抜いたタフガイは、大優勝旗を再度その手にできるのか。
甲子園大会が始まる6日前の8月2日から5日間、中学生の全国大会・第41回リトルシニア日本選手権大会(以下リトルシニア選手権)に通い、7年ぶりに中学野球をじっくり見た。
一言で言うと、中学野球は今とんでもないことになっている。私は選手の能力を判断するポイントを脚力だと思っているが、その脚力が7年前とはくらべものにならないくらい上昇しているのだ。
プロ・アマに関わらず、私が設定する俊足の基準は打者走者の「一塁到達4.3秒未満」(二塁到達8.3秒未満、三塁到達12.3秒未満)。7年前までは、この基準タイムをクリアする選手は少なかった。全国レベルの大会を数十試合見た中で最も速く走ったのは、'06年8月18日に行われたジャイアンツカップのエキシビション、和歌山打田ヤング対藤井寺ボーイズ戦の西川遥輝(現日本ハム)で、記録は4.11秒だった。超俊足と形容してもいい3秒台を見たことは一度もなく、中学生と高校生の間には深くて暗い河があると思っていた。
中学で見つけた野球と短距離の二刀流選手。
しかし今年のリトルシニア選手権では、その3秒台を記録する選手が4人も現れた。
◇8/2 五十幡亮汰(東京神宮3年)……[1]バント安打3.68秒
◇8/3 岡利博(佐倉3年)…………[1]バント安打3.98秒
◇8/4 加藤駿(佐倉3年)…………[3]バント安打3.74秒
松尾康平(佐倉3年)…………[1]バント安打3.88秒
いずれもバント安打で(7年前の西川の4.11秒もバントで記録している)、それではきちんとした脚力とは認められないという人には、五十幡が1回戦で三塁打を放ったときの三塁到達タイムを紹介したい。私のストップウォッチに映し出された三塁到達タイムは11.20秒。これは私が今年見たプロ35試合、アマチュア150試合の中でも9番目に速いタイムである。それを中学3年生が記録した。
速いのも当然で、五十幡は陸上競技100メートル走の全国大会の常連と言ってもいいスプリンターで、昨年の全国中学校陸上競技の100メートルでは準決勝まで進んでいる。
大谷翔平(日本ハム)が投手と野手の二刀流なら、五十幡は野球と陸上短距離の二刀流。こういう選手が中学野球から高校野球に続々と押し寄せている、という感覚を久しぶりに味わうことができた。