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星稜の因縁、安楽の球速、名将の策。
甲子園に渦巻く野球観の相克を見よ。 

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中村計

中村計Kei Nakamura

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photograph byKyodo News

posted2013/08/07 11:50

星稜の因縁、安楽の球速、名将の策。甲子園に渦巻く野球観の相克を見よ。<Number Web> photograph by Kyodo News

7月26日の愛媛大会で、安楽智大は自己最速の157キロを記録。187センチ、85キロの体格をいかし、甲子園でさらなる記録更新を目指す。

注目投手・安楽智大は「自己最速をねらう」。

 '04年から'06年まで3年連続で夏の決勝まで勝ち進んだ駒大苫小牧(南北海道)の元監督、香田誉士史は甲子園出場を決めるといつも言っていた。

「もう俺のやるべきことは終わった。あとは選手に自由にやらせるだけ」

 おもしろいエピソードがある。'06年夏の大会中、ある試合前のことだ。香田が愛用しているノックバットを持ってくるよう頼むと、マネージャーが顔面蒼白になっていた。事情を察した香田は即、「オーケー、オーケー、何でもいいから持ってこい」とさらりと言った。香田のノックバットを練習会場に忘れてきてしまったのだ。準備にうるさい普段の香田なら激高している場面だ。だが甲子園にきたら香田はとにかく明るい雰囲気作りに腐心する。そうして普段は縛り上げている選手たちを解き放ったのだ。

 もちろん香田の方法論がすべてではない。ただ、森、佐々木の両監督が甲子園にきて吹っ切れれば、おもしろい戦いが見られるかもしれない。

 最後に今大会の最注目投手、安楽智大(済美/愛媛)について。

 気になるのは、新聞報道によると「自己最速の更新をねらいたい」と発言しているという。確かに見てみたいものだとも思う。だが2回戦から登場する済美とて、5試合勝ち続けなければ頂点には立てないのだ。夏の甲子園は一にも二にも省エネである。安楽のような本格派は球速へのこだわりをどこかで捨て、抜く投球を覚えなければ夏は持たないのではないか。

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