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北嶋なき柏レイソルを背負う2人のFW。
工藤壮人と田中順也、急成長の理由。
text by
細江克弥Katsuya Hosoe
photograph byAFLO
posted2013/04/26 12:35
大黒柱、北嶋が抜けた穴を工藤壮人(右)と田中順也が競うように埋めている。ACLとJリーグの二正面作戦をレイソルが突破できるかは2人の若者にかかっている。
現時点の成績についての柏レイソルの自己評価は、おそらく「順調」、あるいは、少し自重気味に言葉を選んで「想定内」といったところだろうか。いずれにしても、それなりにポジティブな言葉を選べる状態にあると言っていい。
Jリーグでは第7節終了時点で3勝1分け3敗の五分。一昨年のJリーグ王者にとって8位は良くも悪くもない順位だが、ACL(AFCチャンピオンズリーグ)ではグループリーグで3勝2分けと白星を先行させ、1試合を残して首位通過を確保した。同じくグループリーグを突破したとはいえ、いわゆる“二足のわらじ”に苦しんだ昨シーズンと比較すれば、今シーズンの柏はかなりスマートにアジアの16強に駒を進めたと言える。間もなく迎えるゴールデンウィークの連戦を戦う上で、Jリーグに集中できることの利点は大きい。
ピッチ内では、5年目のFW工藤壮人の存在感が際立つ。
13得点を挙げてブレイクした昨季の勢いをそのままに、今季のJリーグでも既に7試合で6得点を記録。横浜F・マリノスのマルキーニョス、サガン鳥栖の豊田陽平と並んで得点ランキング首位に君臨する。今シーズンからエースナンバー9を背負う男にはその覚悟と自信がみなぎっており、気持ちの強さでゴールを呼び込むスタイルは何ともたくましい。
その姿を後方から見守るDF増嶋竜也が言う。
「それはもう、成長してるのは明らかですね。後ろから見ていても、エースの自覚が出てきたのかなと感じますよ。少し前まではキタジさん(北嶋秀朗)の一歩後ろで、競いながらやっているという感じでしたけど、今は自分がチームを背負うという気概が見える。見ていて楽しみが大きくなる感じで、ホントにたくましくなってきました」
実年齢以上に大人びた雰囲気を醸し出すストライカー。
工藤はユースから昇格して5年目。間もなく23歳。思えば'09年のデビュー当時からコンディションはほぼ一定でムラがなく、緩やかだが着実に右肩上がりの成長曲線を描いてきた印象がある。キャラクターも、実年齢に不相応と感じるほど一切の“浮つき”を感じさせない。ただひたすらに己の信じる道を邁進する実直でストイックなストライカー像は、ずっと彼の手本であり続けた北嶋秀朗(現・J2熊本)にも通じる。
もっとも工藤は、現代サッカーに求められる万能型のFWではない。
前田遼一のような滑らかさも、佐藤寿人のような鋭さも、豊田陽平のような強さもない。ただしゴールに対しては誰よりも貪欲で、とにかく動き回って決定機に絡み、多少強引にでもシュートを放ってゴールをこじ開ける。言葉は雑だが「数打ちゃ当たる」。その“数”を確保できることが、工藤のストロングポイントであると感じていた。ところが今季は“質”の向上が著しい。