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北嶋なき柏レイソルを背負う2人のFW。
工藤壮人と田中順也、急成長の理由。
text by
細江克弥Katsuya Hosoe
photograph byAFLO
posted2013/04/26 12:35
大黒柱、北嶋が抜けた穴を工藤壮人(右)と田中順也が競うように埋めている。ACLとJリーグの二正面作戦をレイソルが突破できるかは2人の若者にかかっている。
工藤の成長を促すライバルとしての田中順也の存在。
もっとも、工藤の成長を促す原動力となっているのは、サッカーとストイックに向き合える彼自身の本質的なキャラクターだけではない。そのもうひとつの要素が、工藤が「いいライバルであり、いい仲間」と語る田中順也の存在である。
工藤より3つ年上の田中は、順天堂大4年時の2009年に特別指定選手としてチームに合流。翌2010年からプロとしてのキャリアをスタートさせ、1年目にJ2優勝、2年目にJ1優勝をもたらすと、チームのホープとして、酒井宏樹(現・ハノーファー)とともにその名が広く知れ渡った。
左足の強打は破壊力抜群。2011年は“打てば入る”と思えるほどの好調ぶりで13得点を記録し、日本代表にもピックアップされて一躍脚光を浴びた。ところが昨季、リーグ戦ではわずか5得点にとどまるなど、急成長を遂げた工藤の陰に隠れる存在となった。
田中にとって、工藤は年下だが良い手本という存在!?
しかし、今季の田中にはプロ1年目のキレが戻りつつある。工藤と入れ替わるようにクラブハウスから出てきた田中を呼び止め、そのことを伝えた。
「キレ……うーん……そうですね。どうなんでしょう……。去年の自分にキレがなかったとは思わないんです。ただ、考えごとは多かったですかね」
――考えごとというのは?
「もっとうまくなりたい、もっと上にいきたい、代表に入りたいという思いと、周りからの期待……そういうことを考えながら、自分のプレーの“落ち着きどころ”をどこに置けばいいんだろうということが整理できていなかったというか」
――何となく分かります。
「だから100パーセント試合に入っていけていなかったんです。そうなると、結果もついてこなければ運も転がってこない。だから……なんだろう……体がキレてなかったわけじゃないんですけど、流れに乗らない、乗れない。でも今年はそういう部分を整理して試合に入っているし、試合にしっかり集中できているし、準備もたくさんしているし、それがアシストとかにつながってきているので。変な考えごとはしてないですね」
昨季の田中が「100パーセント試合に入っていけていなかった」ことは、他のチームメートも、もちろん増嶋も感じていた。
「順也は少し、1回1回の出来事に左右されるところがあったので、常に同じメンタリティーでやってくれればと思うところはありました。『まだ若いな』って。もちろん難しかったと思いますよ。FWは活躍すれば一気に注目度が上がるポジションだから。でも、アイツはそういう部分も徐々に分かってきていると思う。工藤がいい手本になっていると思いますね。アイツはどんな時もブレずに自分のことだけに集中しているので。年下だけど、順也にとってはいい手本。だから、いいライバル関係だなって思います」