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大阪桐蔭3連覇、東北勢の躍進――。
第85回センバツの見所を全て紹介!
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2013/03/20 08:02
小柄だが類い稀な打撃センスを誇る大阪桐蔭の森友哉。2年時に正捕手として春夏連覇を成し遂げている。
大会史上最多タイの36校が出場する今大会の見どころは、達成すれば史上初となる大阪桐蔭の甲子園大会3連覇だが、史上最多となる東北地区から出場する5校の戦いぶりにも注目が集まる。大阪桐蔭と東北勢がどんな戦いをするのか、トーナメント表をAからDまで4つのブロックに分け、それぞれを展望していこう。
聖光学院は抜群の機動力を誇る鳴門を突破できるか?
鳴門(徳島)から沖縄尚学までの9校が集まるAブロックには東北の強豪校、聖光学院(福島)と盛岡大付がいる。聖光学院は出場4回の新興校と言っていいが、その存在感はすでに「強豪校」と呼んでもいいくらい重い。'11年夏の選手権以降4季連続で甲子園に足を運び、ファンにはすっかり顔なじみになっている。例年好選手が多く、今年も園部聡(一塁手)という不動の4番打者がいる。Aブロックを勝ち抜く筆頭候補と言っていいだろう。
この聖光学院が初戦を勝ち上がった場合、3回戦で対戦するのが鳴門と宇都宮商の勝者だ。この両者、下馬評には上がっていないが、新チームになってからの盗塁数が鳴門115(参加校中6位)、宇都宮商99(9位)と脚力自慢である。鳴門に限定するとチーム打率.361(7位)、本塁打21(3位)、失策35(10位)と攻守の各部門が上位の数値を示し、伏兵の匂いがプンプン漂う。
ちなみに、徳島県では'09年以来「徳島県高等学校野球体力・技術向上研修会」という競技会が行なわれている。沖縄が先駆的に行なっている「野球部対抗競技会」の徳島版で、ベースランニング、遠投、ロングティーの記録で順位が争われる。低迷する徳島野球を強くしようとする意気込みが痛いほど感じられるイベントで、沖縄勢がこうした取り組みを経て全国的な強豪県にのし上がっているのは周知の通りだ。
京都翔英のエースで4番・榎本和輝はプロ注目の逸材だ!
隣のブロックでは盛岡大付が上位をうかがっている。
1番望月直也は昨年夏、超高校級右腕・大谷翔平(日本ハム)を打ち破って甲子園に出場したチームの2番打者で、敗れた立正大淞南(島根)戦では2安打を記録している。この望月を突破口にした粘り強い攻撃が持ち味で、昨年秋の東北大会では強豪・東北高(宮城)を4対2、光南(福島)を3対2で破っている。
安田学園(東京)戦を勝ち上がれば待ち受けているのは沖縄尚学、敦賀気比(福井)、京都翔英の勝者だ。注目しているのは京都翔英で、エースで4番の榎本和輝は投打ともプロのスカウトが注目する逸材。タイプ的にはWBC(ワールドベースボールクラシック)で活躍した中田翔(日本ハム)が近い。この榎本をサポートするようにチーム盗塁111(7位)の脚力で相手ディフェンス陣をかき回し、守っては失策29(4位)の手堅さで失点を防ぐ。こういうチームが春は怖い。