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大阪桐蔭3連覇、東北勢の躍進――。
第85回センバツの見所を全て紹介!
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2013/03/20 08:02
小柄だが類い稀な打撃センスを誇る大阪桐蔭の森友哉。2年時に正捕手として春夏連覇を成し遂げている。
“スモールベースボール”山形中央vs.強豪・履正社。
尚志館(鹿児島)から岩国商(山口)までの9校が集まるBブロックには山形中央がいる。
127盗塁(4位)の脚力で長打力不足を補う“スモールベースボール”が持ち味のチームで、東北絆枠での出場となった。履正社(大阪)対岩国商の勝者と2回戦で対戦するが、履正社は昨年秋の大阪大会決勝で王者・大阪桐蔭を3対1で下したチーム。さすがに2回戦突破は荷が重いか。
逆のブロックには勝ち上がったときに対戦する可能性のある大和広陵(奈良)、菰野(三重)、北照(北海道)に評判の選手が揃う。大和広陵の立田将太はストレートが最速149キロを計測する本格派、菰野の浦嶌颯太(うらしま・そうた)はその立田を上回る151キロを1年秋に計測している。浦嶌は肩の故障のため昨年は公式戦にほとんど登板していないが、回復していれば他校の脅威になることは間違いないし、私も是非マウンド姿を目にとめたい。
北照は、超高校級の冠をつけても違和感のない吉田雄人が3番に入る。昨年秋の公式戦の打率は何と.514。明治神宮大会の仙台育英戦ではカーブの落ち際を捉えた右前打が見事で、守っては9回2死満塁の場面で放たれた右中間の大飛球を背走してキャッチしたプレーが正真正銘の超高校級。高校野球ファンの目に触れてもらいたい1人だ。
明治神宮大会優勝校の仙台育英でも勝ち抜くのが厳しいブロック。
仙台育英から春江工(福井)まで9校が集まるCブロックには、明治神宮大会優勝校の仙台育英に注目が集まる。
チームを牽引するのは4番の上林誠知。北照と対戦した明治神宮大会準決勝では7回に好左腕・大串和弥から勝負を決定づける満塁ホームランを放っているが、この一撃、さばくのが難しい内角へのスライダーを打ってライトポールを直撃したもので、普通の打者ならファールになっている。それをフェアゾーンに入れることができたのは技術があるから。
「今大会、投手・野手に関係なくもっとも注目している選手は誰?」と聞かれたら、躊躇せず「上林」と答える。それくらい魅力があるし、脚力、ディフェンス力も見応えがある。
仙台育英にスキがあるとしたら投手力だろう。対する創成館(長崎)は飛び抜けた打撃力はないが、打率.322、本塁打11、盗塁73と攻撃力の数値が高く、大野拓麻を中心としたチーム防御率も1.92と高い。接戦に持ちこめたら、仙台育英にスキができるかもしれない。
もう1つのブロックには近畿大会準決勝で大阪桐蔭を1安打完封で退けた報徳学園(兵庫)が控えている。完封劇を演じたのは右腕・乾陽平で、先日スポーツ紙は阪神のスカウトが上位指名候補に挙げたと報じた。
最速146キロのストレートにスライダー、カーブを交えた緩急で揺さぶるピッチングに特徴があり、新チーム以来の投手成績は29試合、177回3分の2を投げ、防御率1.06と完璧に近い。報徳学園が強いときは好投手がいるとき――これは歴史的事実。'81年の選手権優勝時には金村義明(元近鉄など)、'02年選抜優勝時には大谷智久(ロッテ)がいた。今年は11年ぶりにめぐってきた甲子園優勝のチャンスと言っていいだろう。