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ヤクルト快進撃を支える兄と弟!?
助っ人外国人選手の名コンビ列伝。
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2012/04/28 08:01
本塁打を放ったバレンティン(中央)とともに、ミレッジとつば九郎が東京音頭を踊って祝福するなど、両助っ人がチームの雰囲気を明るくしている。
“元メジャーリーガー”を仰ぎ見る、弟的視点とは?
先輩は後輩にいろいろなことを教えようとして、時にうるさがられる。これは先輩と後輩というより、兄と弟の関係のようでもある。
1993年に著された『兄弟の社会学』(講談社)という本の中の一節で、著者の畑田国男氏は、弟の優位性を次のように書いている。
<「弟」は物心つく頃になると、何をするにも「兄」と競争しなければならなくなる。
おもちゃやお菓子から親の関心・愛情まで「兄」と競い合って育っていくわけだが、いつも「兄」を見上げている「弟の視線」、この勾配の高さが実はポイントになっていた。
スポーツに限らず、行動することによって自分を高めてゆこうとする心、向上心を生む原点にあるのは、「弟の視線」の勾配の高さなのである>
プロ野球史に名を残す8組のコンビにも、この「兄弟的相克」が当てはまる。“元メジャーリーガー”の称号で呼ばれる先輩は球団内で敬意をもって迎えられ、年下でアメリカでの実績でも劣る後輩は「敬意を表しつつも、この先輩を超えなければ異邦で勝ち残ることはできない」と歯をくいしばって精進する。
ボイヤー―シピン、ソレイタ―クルーズ、スミス―クロマティ、オグリビー―ブライアント、ブラッグス―ローズ、ペタジーニ―ラミレスと、実に8組中6組の確率で、後輩が通算成績で上回っている。このようなコンビで高め合う関係は、現在の外国人に存在するのだろうか。
いま最も名コンビに近いのが、ヤクルトのバレンティンとミレッジ。
今も昔も、2人以上の外国人野手が同時期に活躍するのは珍しい。
現在の球界ではヤクルト(W.バレンティン―L.ミレッジ)、阪神(C.ブラゼル―M.マートン)くらいしか見当たらない。そして、最も名コンビに近いのがヤクルトのバレンティンとミレッジだと思う。「影響し合う関係」が、阪神の2人にくらべ、よく見えるからだ。
まず2人の経歴を簡単に紹介する。
◇バレンティン……84年生まれ、27歳。MLB通算打率.221(113安打)、15本塁打
現在の成績→打率.313(3位)、本塁打5(1位)、打点12(3位)
◇ミレッジ…………85年生まれ、27歳。MLB通算打率.269(404安打)、33本塁打
現在の成績→打率.250(19位)、本塁打3(5位)、打点10(8位)
4月24、25日の中日戦を見て、ミレッジに対する問題児云々といった先入観が消えた。
入団前、頻繁に耳にしたアメリカ時代の問題行動のうち、放送禁止用語が満載したCDを発表して物議をかもしたというのは最もよく知られたエピソードである。しかし、実際のプレーを見ていると、そういう話題がいかに空しいかよくわかる。