プロ野球亭日乗BACK NUMBER
MLBとの親善試合で気づいた、
統一球がメジャー球より飛ばない訳。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byHideki Sugiyama
posted2012/04/29 08:01
統一球導入元年となった昨季、93打点で自身初の打点王を獲得した新井。今季も深刻な「投高打低」が続くなか、選手会会長としてNPBと12球団に統一球の検証と見直しを求めた。
まず、最初にこのコラムをご覧になっている読者に、筆者の不明をお詫びして頭を下げなければならないと思っている。
開幕直前に掲載されたコラム「“飛ばない統一球”驚きの都市伝説。今季プロ野球は投高打低にならない!?」は、どうやら見当違いだったと言わざるを得ないようだ。
そのコラムでは、昨年の統一球導入で起こった投高打低現象の要因について、ボールの反発係数の低下だけではないのでは、と論じた。その裏付けとして、流体力学の専門家である福岡工大・溝田武人教授の「縫い目の高さや幅の変化から、統一球は同じ角度、速さで投手がリリースした場合、ベース板上では旧球に比べて4cm下を通る」という実験結果を紹介。打撃不振の一因は、打者たちがこの4cmの差に戸惑った結果だったのではと推論した。
そうして今年は、各打者が必ずこの軌道の変化に合わせてバッティングを修正してくるはずであり、「今年は打者の逆襲に期待したい」と結んだ。
ところが、だ。
そんな期待は開幕直後からあっさりと吹き飛ばされてしまったのである。
3分の1が完封試合という“超投高打低”の異常事態。
今年の投高打低現象は、昨年にもまして拍車がかかったようにみえる。
開幕からほぼ1カ月が経過した4月25日時点でセ、パ両リーグ合わせて123試合を消化した。そのうちほぼ3分の1にあたる38試合が完封試合というのは、ちょっと異常な事態と言わざるを得ない。「4cmの差さえ埋められれば」という筆者の論は、この現実に早々と打ち砕かれてしまったわけだ。
そしてこの異常な投高打低現象は、やはりいわゆる飛ばないボール、統一球の反発係数から起こっているということになるのだろう。
3月のメジャー開幕戦前のことだった。
巨人と阪神がシアトル・マリナーズとオークランド・アスレチックスとプレシーズンマッチを行なった。実はその際に、ある関係者がメジャー公式球と日本の統一球を同じ高さから落として、跳ねかえりを比べてみたという話を聞いた。
「そうしたらメジャーのボールの方が高く弾んだというんです」
もちろんこれは正式な検証ではない。これをもってメジャー球の方が飛ぶというデータになるわけではない。