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ヤクルト快進撃を支える兄と弟!?
助っ人外国人選手の名コンビ列伝。
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2012/04/28 08:01
本塁打を放ったバレンティン(中央)とともに、ミレッジとつば九郎が東京音頭を踊って祝福するなど、両助っ人がチームの雰囲気を明るくしている。
ミレッジのあるプレーを見て“問題児”の偏見が霧消。
4月24日の中日戦では次のようなプレーで魅了された。
まず、守り。1回表、森野将彦の左中間への長打性の打球を背走した左翼手・ミレッジは横向きの状態でこれをキャッチして先発の館山昌平を助けた。
次は打撃と走塁。無死一、二塁の場面で打席に立った第1打席。3番ミレッジはいきなりバントを敢行して驚かせた(空振り)。その後、投手の暴投があって二、三塁になり、遊撃ゴロで三塁走者を迎え入れるのだが、このときの打者走者としての一塁到達タイムが「真摯な走り」と言ってもいい4.38秒。バントといい、走塁といい、チームプレーの意識がないと即座にこういうプレーをすることはできない。この段階で、アメリカ時代の“問題児”云々の疑惑が、私の中からスッと消えた。
第2打席は打撃のよさに目を見張った。
山井大介の投じた初球スライダーをおっつけると打球は右中間を深々と破る二塁打となる。メジャー時代に取り組んだと言われる逆方向へのバッティング技術を見せつけるような打球で、翌25日の第3打席でも中田賢一の139キロストレートをうまくおっつけて右中間に二塁打を放っている。
ミレッジのプレーに触発され、バレンティンにも明らかな変化が!?
これは単にミレッジだけの問題ではなく、次を打つ4番バレンティンにも好影響を与えている。
24日の3回裏、ミレッジの二塁打のあと打席に立ったバレンティンは、山井の外角140キロストレートをうまくおっつけてライトスタンドにぶち込むホームランを放っている。
バレンティンの昨年の安打方向は左翼66、中堅29、右翼16(『プロ野球スカウティングレポート 2012』廣済堂出版より)。
これからわかるように完全に引っ張りに特徴があるプルヒッターだった。それが今年はミレッジの流し打ちに感化されたように右打ちをして結果を出しているのだ。'60~'90年代の外国人野手の名コンビを見るような思いがした。
ミレッジに話を戻すと、24日の第4打席は四球で出塁したあと二盗を敢行、ヘッドスライディングでセーフを勝ち取っている。25日の4回表には、和田一浩のラインドライブがかかったライナーをヘッドスライディングで好捕。とにかく野球が好きで好きでしょうがないというプレーの連続である。