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日ハムの指名に会場から拍手喝采が。
2011年ドラフト、全球団を徹底検証!
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNIKKAN SPORTS/AFLO
posted2011/10/28 13:00
日本ハムに強行指名された菅野智之は「監督だったり、両親と相談して決めたいなと思っている」。菅野の父親は「ドラフト制度を否定するわけじゃないが困惑しています。こちら側には何も話はなかったし、誠意を感じない」とコメント
今季の上位球団が、ドラフトでも見事な結果を出した。
◇ソフトバンク 100点
1位武田翔太(投手・宮崎日大)は近年では前田健太(PL学園→広島)に匹敵する逸材。つまり5年に1人の逸材と言っていい。
高校生には“即戦力”という表現は使いづらいが、武田は2年目くらいに5、6勝できる即戦力度がある。肉体的強さ、精神的な成熟に加え、技術的には故障しづらい投球フォーム、ストレートの速さ、多彩な変化球とそのキレのよさを備えている。戦略通りの一本釣りにも成功し、文句のない指名になった。
2位では武田ほどの完成度はないが、ストレートの威力やスライダーのキレのよさを誇る吉本祥二(投手・足立学園)を指名。近年、ソフトバンクは高校卒の岩嵜翔、山田大樹を一軍戦力に育て上げ、二軍にはMAX153キロを誇る川原弘之も控えている。この育成力があるからこそ、1、2位指名を高校生で通せたのだろう。
◇中日 90点
3球団の重複があった高橋周平の当たりくじを見事引き当て、高木守道次期監督にとっては幸先のいいスタートになった。
大島洋平、堂上剛裕・直倫、平田良介、中田亮二という若手が育ちつつある中日に、さらに起爆剤になり得る超高校級スラッガーが入り、将来への備えは万全。技術的に見れば木製バットへの対応力はAAAアジア選手権の活躍で実証済みだ。「回転で打つ」という常識に対し、「インパクトから先で回転」と、順序立ててバッティングを語れる思考力に最も魅かれる。
2位以下では2位西川健太郎(投手・星稜)、3位田島慎二(投手・東海学園大)、5位川崎貴弘(投手・津東)、宋相勲(投手・福井工大福井中退)と、地元・中部地方の選手に固執しすぎたきらいがある。落合博満監督の退任騒動でも見られたが、全国区になろうとする力を、地元に引き留めようとする力が抑えつける、そんなせめぎ合いが中日は他球団にくらべて強い。東海圏に縁のない私には阪神が実現した全国区への旅立ちを期待したいが、かなり難しそうだ。
◇日本ハム 100点
菅野の1位入札・交渉権確定で満点の指名になった。
拒否の可能性も非常に高いのだから、評価は「満点か零点」とぼかすのが普通だが、そうはしたくない。拒否されても心意気を見せてくれたことへの感謝をこめて満点とした。
2位以下は高校生主体になった。ここでも、菅野を獲得できるという前提で指名している。拒否された場合の保険で、2、3位は即戦力投手を指名するのが普通の感覚だが、高校生主体で押し通しているのは、菅野を獲得するという意気込みを私たちに見せているからに他ならない。近年の日本ハムの強さ、充実の秘密がよくわかる。