濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
武尊“早すぎた1分20秒KO負け”はなぜ起きたのか?「先のことは考えてない」試合後の本音… SNSでは「限界論」も、本当に考えるべきキャリアの本質
text by

橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byONE Championship Susumu Nagao
posted2025/03/24 17:24

ロッタンの左フックを被弾しダウンした武尊。カウントアウトとなった瞬間
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武尊のキャリアは“消費”されるべきではない
武尊はここまで生き急いできたように見える。そこが魅力ではあるのたが、那須川に敗れた1年後に復帰して2年あまりで4試合。昨年1月の試合でヒザの骨折と腿の筋断裂という重傷を負い、それでも9月に復帰した。その試合でダウンし、半年で今回のロッタン戦。おそらく今の武尊は“動ける時期はすべて追い込み”といった状況ではないか。もちろんそれも本人が選んだことなのだが。
卜部功也によると、武尊は「自分より周りが笑ってくれるのが一番嬉しいという人間」。今大会には武尊と同門の野杁正明、ムエタイ2大殿堂の統一王者となった吉成名高など日本のトップ選手が集結した。武尊はそのことを、ことのほか喜んでいた。しかし自分はKO負けに終わってしまう。
「最高のONE日本大会を、勝って締められなかった」
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そういう言葉が出てくるのが、武尊らしい責任感なのだろう。しかし日本の立ち技格闘技を背負うのは武尊だけでなくてもいい。この日、野杁は圧倒的不利の下馬評を覆してタイトル獲得。吉成もタイ人相手に完勝している。
今の武尊には周りの笑顔より、自分のことだけを考えてほしい。グローブよりも楽器を手にする時間のほうが長くてもいい。彼はあらゆる意味において“消費”されるべきではないし、それだけの闘いをこれまでのキャリアで見せてくれたのだ。
