濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
武尊“早すぎた1分20秒KO負け”はなぜ起きたのか?「先のことは考えてない」試合後の本音… SNSでは「限界論」も、本当に考えるべきキャリアの本質
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橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byONE Championship Susumu Nagao
posted2025/03/24 17:24

ロッタンの左フックを被弾しダウンした武尊。カウントアウトとなった瞬間
といっても、いわゆる“失神KO”ではなかった。レフェリーのダウンカウントが進む中、武尊は寝た状態ではなくマットに座っていた。すぐ頭に浮かんだのが、ボクシングの井上尚弥vs.ルイス・ネリだ。キャリア初のダウンを喫した井上だったが、慌てて立ち上がらず冷静にカウントを聞きながらダメージの回復に努めた。
武尊も同じことをしようとしていた。だが意識が朦朧としていたのか、立ち上がる瞬間にカウントアウト。一瞬、不服そうな態度を見せた武尊だが、試合後のインタビュースペースでは負けを認めている。
「ダメージの回復を待ってはいたんですが、立って(続行して)いてもどうなっていたか分からない。何の文句もないです。自分が弱かっただけ。今の自分の体でできた限界がこれなので」
「先のことは考えてない」試合後に語った“今後”
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試合後の武尊と話をしたというONEのチャトリ・シットヨートンCEOは「また(試合を)やるしベルトを狙うと言っていた」とコメント。ロッタンとの再戦もありうるとした。「ハイレベルな試合では一瞬で勝敗が変わってしまうものなので」
ただONEがSNSで公開したバックステージの映像を見ると、チャトリ氏が「また頑張ろう」といった声をかけ、武尊が無言で聞いているといった光景だった。武尊自身はインタビュースペースでの質問に対し、現役続行について明言していない。
「追い込みから試合まで、まったく次のことを考えず体が壊れてもいいつもりでやってきたので。こういう結果で悔しさはもちろんあるし、やりきったかと言われたらまだ分からないです。次のことは考えてない。冷静になってしっかり考えて、また正式に発表したいと思います」
ロッタンとの再戦についても、気が逸るようなところはなかった。
「どうせ倒されるなら思い切り打ち合いたかった。でも、もう終わったことなので受け入れるしかない。リベンジしたいかと言われたらもちろんしたいですけど、先のことは考えてないです」
武尊は試合に向けた“追い込み”期間を長く取るタイプ。日々の練習から気力、体力の極限を生きる。趣味は楽器。演奏に没頭することで、試合に向けてこわばる心と体をほぐすのだという。
そういうファイターが、負けた後のことをすぐに考えられるわけがない。那須川に敗れた後は、ロッタン戦を掲げることでモチベーションが再構築された。しかしそのロッタンに敗れた今、何をどう考えればいいというのか。