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「合ってる?」「うん」試合直後に大谷翔平と山本由伸が“イタズラ合戦”「先輩後輩を超えて…」ドジャース入団から1年、関係性はこう変わった
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佐藤春佳Haruka Sato
photograph byNanae Suzuki
posted2025/03/22 11:03

東京ドームでの開幕シリーズを終え、笑顔で記念写真を撮るドジャースの大谷翔平、山本由伸、佐々木朗希
重圧を分かり合える存在
WBCを制した激闘の中で仲を深めた二人は翌年、ドジャースでチームメートになる。とはいえ振り返れば1年前、韓国で行われたサンディエゴ・パドレスとの開幕シリーズでの二人は、いずれも険しい表情を浮かべていた。山本はMLBデビュー戦で1回5失点と大炎上。一方の大谷も当時の通訳の水原一平氏による巨額詐欺事件が発覚し、かつてない苦境に立たされていた。
片や「10年7億ドル」というスポーツ史上最高額での大型移籍。片や「12年3億2500万ドル」というMLBの投手で史上最高額の大型契約。新天地での船出でいきなり逆風にさらされたプレッシャーはいかばかりだったろう。しかし、二人は共に結果を残すことで自らの価値を証明し、ドジャースに不可欠な存在としてワールドシリーズ制覇に貢献した。その戦いの中で、“選ばれし者”としての重圧を分かり合える存在が同じチームにいることは大きな心の拠り所になったに違いない。シャンパンシャワーを浴びせ合う二人の表情は、それを物語っていた。
MLB開幕シリーズの対戦相手であるカブスの今永昇太は同僚の鈴木誠也について「同じ日本人がいる、ロッカーで悩んでいたら聞ける。自分が野球選手でなくてもいい瞬間があるっていうのは僕としては嬉しいし、そこに救われたと感じています」と語っている。世界一軍団であるドジャースの中にいれば尚更、お互いの存在が欠かせないものになっていったことは想像がつく。
この1年で、大谷の表情は“大きく変化”した
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二人の素顔には共通点もある。野球に対してストイックで、芯をしっかりと持ちどんな時も自分のペースを貫けること。一方でNPB時代はいずれも、チーム内の先輩に対してちょっかいを出したりいたずらをしたりと、遠慮なく懐に飛び込む“愛されキャラ”でもあった。
大谷と日本ハムの同期入団で、昨季限りで現役引退した鍵谷陽平氏は以前、4歳年下の大谷について「“クソガキ”です。愛情を込めて。いたずらをしても、みんなに好かれる」と話している。山本も同様、オリックス時代は周りの先輩たちに可愛がられる“クソガキ”的存在だった。振り返れば共に20代前半でチームの看板選手となり、周りの主力選手は年上ばかりという環境。人懐っこくて少し生意気、というそのキャラクターは、チームメートとの信頼関係を築くのに大いに役立ったはずだ。
“クソガキ”同士の相乗効果(?)なのか、この1年で大谷の表情は大きく変化したように見える。キャンプ地でも取材した解説者の五十嵐亮太氏は「明るく、表情が豊かになったような気がした。去年より顔つきや物腰が穏やかになって、余裕を感じさせるような雰囲気があった」と話す。結婚という変化に加えて、チームに山本や佐々木も加入したことで安心感が生まれ「後輩に対して接するなかで包容力のようなものが滲み出ているのかもしれない」と推測する。