- #1
- #2
マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
ソフトバンク甲斐拓也が巨人移籍…ベテラン記者が考えた日本野球“有力捕手少なすぎ”問題 敏腕スカウトも「捕手からこの国の野球が壊れてくる」
posted2024/12/26 11:10
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
BUNGEISHUNJU
捕手というポジションは、昔から「扇の要」などと評され、そこを守る者は、ディフェンスの最重要人物とされてきた。
それだけに、プロ野球の歴史の中にも、その時代、その時代で、必ず球界を代表するような「名捕手」が現れて、チーム内でも絶対的存在のレギュラーマスクとして君臨していたものだ。
以前はヤクルトといえば古田敦也(以下、敬称略)とか、西武といえば伊東勤、ダイエーなら城島健司みたいに、チーム名とそのレギュラーマスクとはワンセットで、すぐ名前が挙がるぐらいシンボル的存在だったが、今のプロ野球界はどうだろう。
ADVERTISEMENT
スッと出てくるのは、ソフトバンク・甲斐拓也(巨人移籍)、ヤクルト・中村悠平ぐらいだろうか。むしろ、複数の捕手の名前が挙がるチームのほうが多いようである。
今年のドラフトで支配下指名された捕手は5人
ひるがえって、この秋のドラフト会議。あまり話題になっていないが、支配下ドラフトで指名された「捕手」がわずか5人だったことをご承知だろうか。
1巡目、2巡目……上位3巡目まで、「捕手」の指名が1人もいない。4巡目になって、ようやく日本生命・石伊雄太(24歳・178cm84kg・右投右打)が中日に指名されて、なんだか妙にホッとしたものだ。
その直後だ。
オリックスの4巡目で三菱重工Eastの山中稜真(24歳・178cm82kg・右投左打)が、「捕手」として指名されたから驚いた。
青山学院大から社会人の2年間、広角に痛烈なライナー性の打球を飛ばしながら、外野や内野を守っていた選手だ。「捕手で」といわれて、遠い記憶を引っ張り出して、そういえば高校生の時(木更津総合高)に、いっときマスクをかぶっていた時期があったなあ。
それにしても「捕手」である。どのポジションよりも実戦での経験値が必要な捕手に、6、7年ぶりにマスクをかぶる選手を抜擢するとは……。もちろん、入団後にどこを守っても構わないのだが、驚きと違和感が混ぜ合わされたようなミステリアスな指名となった。
「私もそのことはずっと考えてきたんです」
ある記者の方は、こんな「仮説」を挙げてくれた。
「もちろん、捕手としての能力も評価したんでしょうけど、一方で、アマチュアにあんまりいい捕手が出てこないから、『アマチュア、だらしないぞ!』って活を入れるっていうのか、ショックを与えるっていうのか。そういうプロ側からの痛烈なメッセージっていう意味合いはないですかね」