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マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
甲斐拓也の巨人加入は“背信行為”?「大きな戦力アップになるかは…」敏腕スカウトが疑問視するワケ「“刺せる”岸田のほうがありがたい投手も」
posted2024/12/26 11:09
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Nanae Suzuki
もう15年も前のことになるだろうか。
大分の楊志館高校に、松永賢人君という183cmの大型本格派が現れて、3年夏の甲子園予選に登板すると140キロ台の速球で相手打線を圧倒。2試合連続完封やら、甲子園出場の明豊高を5安打2失点に抑えるやらの大奮投を続けたものだから、秋になって、取材に伺ったことがある。切り口は確か「ドラフトの隠し玉」だったと思う。
楊志館高のグラウンドには、ファールゾーンの一隅によく手入れされた花壇があって訊いてみたら、ちょうど1年ほど前にガンのために高校3年生で亡くなった大崎耀子マネジャーを偲んで、部員たちで作って、部員たちが丹精している花壇とのことだった。合掌。
グラウンドで目にした「高校時代の甲斐拓也」
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グラウンドで始まったシートノックを眺めていたら、小柄なキャッチャーと偶然目が合った。
見るともなくその動きを追っていたら、内野手のような敏捷なフットワークと捕って投げるスピードが、こちらの目に飛び込んできた。いい選手というのは、探す必要はない。向こうからこっちの目に飛び込んで来てくれる。
その小柄なキャッチャー、ワンプレーごとにチラッ、チラッとこっちに視線を送ってくる。見てくれてるかな……アピール目線だ。
マウンドの向こうでホップするようなセカンド送球の後などは、チラッにニヤッが加わって、会心のドヤ顔だ。
今考えると、そのドヤ顔は、高校時代の甲斐拓也捕手だったのだろう。
松永投手の1年後輩のはずだから、当時は、秋の新チームのレギュラーマスク。声をかけて、ちょっとでもいいから話をしておけばよかった。
今となっては、痛恨の「特落ち」となっている。
その甲斐拓也捕手が、育成ドラフトの最後の方でソフトバンクに指名されて入団し、懸命の努力の末に一軍のレギュラーマスクを8年つとめて、球界を代表する捕手にのし上がったと思ったら、このオフ、FAで巨人に移籍してしまったから驚いた。