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マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
ソフトバンク甲斐拓也が巨人移籍…ベテラン記者が考えた日本野球“有力捕手少なすぎ”問題 敏腕スカウトも「捕手からこの国の野球が壊れてくる」
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byBUNGEISHUNJU
posted2024/12/26 11:10
ソフトバンク・甲斐拓也による巨人への「正捕手の移籍」というレアケースで見えてきた“有力捕手少なすぎ問題”とは?
実は私、この推論に痛く共感してしまった。
野球の現場が閉じてオフになると、関係者たちの集まりが増える。その席で論じられる勝手な放言の中には、時としてドキッとするようなテーマや論の展開があって、こんなに勉強になる機会もない。
「確かにそれはあったかもしれない。オリックスは6位指名で、“指名できない選手”を敢えて指名にいって、連盟からのクレームにも編成部副部長が懸命に主張して20分ほど会議が止まった。今のドラフト制度に何か、一石を投じたいっていう思いが伝わってくるんですよ」
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少し前までアマチュア野球の現場で指導にあたっていた方だっただけに、その「洞察」も実感がこもっている。
それにしても、今年(2024年)の「支配下ドラフト」で指名された69選手のうち、「捕手」の指名はわずか5人。
こちらのほうに、話を戻そう。
ちなみに、昨年(2023年)のドラフトでも、72選手の支配下指名に対して、捕手の指名はやはり5人。一昨年も、支配下指名69選手に対して、捕手は5人。ディフェンスの最重要ポジションと見なされているわりには、おおまかにいって1球団が2年に1人しか獲れていない現実というのは、やはり何か心寒いものを感じざるを得ない。
なぜアマチュア球界の「捕手」が育たない?
ならば、どうしてアマチュア球界の「捕手」が育たないのか?
ある社会人野球の指導者の「言い分」は、こんな内容だった。
「キャッチャーだけじゃないです。すべてのポジションについて、今の社会人は選手が育たないってずいぶん悪口言われていますよ」
2024ドラフト、高校からは22選手、大学からは27選手が支配下指名されているのに、社会人からは13選手のみ。確かにプロ野球に最も近いレベルにあるはずの社会人からの指名が、3つのカテゴリーで最も少ないのはいかがなものか。
「キャッチャーに限っていえば、これは私の感じ方ですが『育ててもらおう、育ててくれるんだろう』みたいな受け身の選手ばっかり。ピッチャーで入って来る子は、学校でそれなりの教育を受けているので自立心がある子が多い。内野手も、上手い子はそうですね。人の野球を見て、技術を盗んで、自分のレベル上げようって<本能>みたいなものがあるから、反復するしつこさがあれば、必ず伸びてくる」