大谷は、まさに「別」だ。

　あまりにも偉大になり過ぎた大谷と同世代で野球をやることは幸せなのか不幸なのか。かつての藤浪世代、今の大谷世代の選手に話を聞くたびにそれを考えていた。

　北條は迷いなく言った。

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「僕はぜんぜん幸せです」

　そして、こう付け加えた。

「誠也がいちばんかわいそうだと思うんですけど。大谷がおるからこっちが麻痺しちゃっていますけど、これだけの成績を残したら、かつての松井秀喜さんくらいな感じじゃないですか」

　カブスの鈴木誠也はメジャー3年目、打率.283、ホームラン21本の好記録を残した。彼もまた大谷世代である。北條は鈴木誠也の気持ちをこう代弁する。

「でも誠也は、なんで自分の成績が讃えられないんだろうとかは思わないタイプ。向上心の塊なんで。僕は2019年にハワイで結婚式をあげたんですけど、ちょうど同じタイミングで誠也もハワイで式をあげていて。あいつから『ハワイおるの？　俺も結婚式できてる』ってLINEがきたんです。そうしたら誠也はトレーニングがぜんぜんできない、マジで最悪……ってこぼしていて。練習したくてしょうがないんですよ。僕も軽くランニングぐらいはしていましたけど、誠也はマジでしたから。そこまでのものは僕にはない。僕もやっていたつもりなんですけど、ぜんぜん足りてなかったのかなという部分はあります」

盟友・藤浪晋太郎について

　盟友でもある藤浪晋太郎についても尋ねた。藤浪はプロ4年目以降、ひとたび制球が乱れ始めると収まりが付かなくなることが度々あった。

「人と違う手の長さとかあると、人にはわからない部分もあるのかなと思います。いいときは1球抜けても気にせずドーンといけるんだけど、ダメなときは抜けっぱなしというか。自信がないときはマウンドにいてもピヨピヨピヨみたいになっているので。マウンドに行くと『ごめん、ごめん』みたいな。ヤバいと思っているのが丸わかりなんです。一流の人からしたら、もっと考えるところがいっぱいあるだろうって思われるかもしれないけど、あいつもめっちゃやってますし」

――北條さんは、あと何年くらい現役を続けるつもりなのですか。

「それは考えないでおこうと思っていて。いつ辞めてもいいように毎日、後悔のないように過ごそうと思っているだけで」

　今年、北條はいきなり社会人野球の2大大会である都市対抗と日本選手権の本戦を経験している。

「社会人野球はトーナメント制なので、1試合にかける思いは社会人の方が強いですよ。予選を勝ち抜いたりしたとき、やっぱり野球をやっている方がいいなと思えましたね。野球をやっている方が絶対に楽かな、と。逆に」

　自分の居場所を見つけた人の言葉だった。