野ボール横丁BACK NUMBER
巨人関係者「君をドラフト2位で指名する」発言も…まさかの“阪神入団”、北條史也のパニック「わけわからん…」「藤浪晋太郎と一緒か」ドラフトウラ話
posted2024/12/08 11:01
text by
中村計Kei Nakamura
photograph by
Sankei Shimbun
「大谷よりもすごく見えましたね、自分は」
そう語るのはリトルリーグ時代、あの大谷翔平をして「負けた」と言わしめた投手であり、スラッガーでもあった大坂智哉である。大坂は青森山田高校時代、5季連続で田村を擁する光星学院(当時)に敗れ、甲子園出場を阻まれている。
「田村は小さいけどパワーがあった。どこにでもホームランを打てるので、怖かったですね。僕はどうやって抑えたらいいか、わからなかったので」
「藤浪より田村がスゴかった」
ADVERTISEMENT
ボーイズリーグはリトルリーグと並ぶ国内の二大硬式少年野球チームのリーグだ。ボーイズはチーム数に応じて各エリアに支部を設置している。ひとつの県の中にいくつもの支部があるところもあれば、複数の都道府県で1つしか支部がないところもある。
発祥の地でもある大阪には全国最多となる4つの支部がある。北條がプレーした大阪狭山ボーイズはそのうちの1つの阪南支部に所属していた。「阪南」とは大阪の南、和歌山県と接するエリアを指す。
強豪がひしめく同地域は才能の宝庫で、2012年夏の大阪桐蔭と光星学院の決勝の先発オーダー表には各チーム4人ずつ、計8人もの阪南エリアの出身者が並んでいた。そのうちの1人が大阪泉北ボーイズ出身の藤浪晋太郎である。
藤浪は中学を卒業するときはすでに身長は195cmあり、最高球速は142kmまで達していた。だが、そんな藤浪も田村を前にすると北條の目には霞んで見えたという。
「中学時代の藤浪と対戦したのは1回あるかないかくらいだと思うんですよ。でっかと思いましたけど、田村の方が完成度は高かったんです。球も速いし、変化球もいい。スライダーもキレキレでしたから。コントロールもいいですし。藤浪は球は速いけど、コントロールはバラバラみたいなイメージがあったんです」
前出の大坂はプロのレベルを「田村」という物差しで測っていた。
「あの田村がバッティングで苦しんでいるのを見て、プロってすごいなと。あの田村で打てなかったら、どうしたらいいの? っていう感じですね」
その話を北條にぶつけると、こう言って笑った。
「光星の同級生は、みんなそう思ってます」
北條にとって、大谷の打撃はすごかったが、間近で見続けてきた田村を超えるものではなかった。だが、高校生活の最後の最後で田村を超える存在が現れた。3年夏、甲子園の決勝で対戦したときの藤浪である。