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「お前はもう無理や。諦めろ」戦力外通告の電話、金本知憲は言った…北條史也が明かす“同学年”大谷翔平、藤浪晋太郎への本音「鈴木誠也がいちばん可哀想」―2024下半期読まれた記事
posted2024/12/21 06:00
text by
中村計Kei Nakamura
photograph by
KYODO
2024年の期間内(対象:2024年9月~2024年12月)まで、NumberWebで反響の大きかった記事ベスト5を発表します。大谷翔平世代部門の第5位は、こちら!(初公開日 2024年12月8日/肩書などはすべて当時)。
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「終わりやなと思いましたね」
10月1日、ファームの全日程が終了した。戦力外通告を受ける場合、通常はマネージャーから電話があり、翌日、スーツを着て球団事務所やホテルに来るよう指示される。
その電話があるとしたら、1日の夜だと思っていた。しかし、シーズンを終えた日の晩は北條史也の携帯は鳴らなかった。
「山を越えたと思って、次の日、奥さんと普通に神戸で買い物をしてて。駐車場に戻ってきたところで球団から電話があったんです。『電話かかってきたわ』って言ったら、奥さん、『ちょっとお腹が痛くなってきた』とか言ってトイレに行っちゃったんですけど」
その日の夜は世話になった人への報告に追われた。明日、戦力外通告を受けることは間違いなかった。
「お前はもう無理や。あきらめろ」
上を目指し続ける野球。そこにピリオドを打とうと決めたのは前々監督の金本の言葉を聞いたときだった。
「金本さんに『もう、あきらめろ』って言われたんです。『高山は能力あるから環境変わったら変わる可能性あるけど、お前はもう無理や』って。『家族がいるだろ? 高山は結婚してない。クビになって、他のチームに行ってもよくて2年くらいやから』と」
2016年にドラフト1位で阪神に入団した高山俊は1年目に新人王を獲得するなど将来を嘱望された外野手だった。しかし2年目以降、ルーキーイヤーを上回る活躍を見せることができず、同年同日、北條と同じように球団から面会希望の連絡が入っていた。
北條はプロの世界の競争に心底、疲れていた。
「数字に追われる野球は、ちょっと、もう……。他球団に移っても、またメンタルにくる日々を送らなければならない。それを考えたら、きついな、と。もう一回、プロの一軍で活躍したいとは思えませんでしたね。もう、ええわと思って」
次の進路は二者択一だった。球団に残って野球アカデミーの仕事に就くか、真っ先に声をかけてくれた社会人野球の三菱重工Westに進むか。独立リーグからも誘いがあったが、NPB同様、毎日のように試合をする生活に抵抗を覚えた。