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大学野球PRESSBACK NUMBER
ドラフト裏話…六大学の名門・早大の主将と副将「分かれた明暗」なぜ“大学日本代表のキャプテン”が指名漏れに? 監督が語っていた「ある懸念」
text by
清水岳志Takeshi Shimizu
photograph byHideki Sugiyama
posted2024/10/29 17:45
早大、大学ジャパンでもキャプテンを務めた印出太一捕手。まさかのドラフト指名漏れとなった
一方で、印出のアピールポイントはバッティングである。
六大学通算打率3割1分1厘、5本塁打、49打点(10月28日現在)。規定打席到達レベルの4年生で打率3割を超えているのはドラフトで5球団が競合した明大・宗山塁と印出だけだ。
球界全体を見渡しても「4番・キャッチャー」はそうそういない。しかし、キャッチャーは「守りだけしっかりしていれば十分」という考え方もある。打てるキャッチャーというのは、究極の存在だからだ。
そこの評価の差が、今回のドラフトでは噛み合わなかったのかもしれない。
印出は名古屋市天白区、吉納は春日井市出身。中学時代にともにボーイズリーグに所属していたことで、お互いに存在を知ることになる。それぞれ高校野球の名門ライバル校に進んで、甲子園を目指した。高校時代の公式戦は、印出が2勝1敗で勝ち越したという。
高校2年の秋には、同じチームでプレーする機会があった。
印出の通う中京大中京が明治神宮大会で優勝したことで、愛知県の高野連がそれを記念して愛知県選抜を編成し、台湾遠征をおこなったのだ。そのチームに吉納も選ばれた。打力もある捕手で、チームの要でもある印出を意識するきっかけになったという。
そんな2人が雌雄を決するはずだった3年生の大会は、コロナ禍のためになくなってしまう。そして、大学は2人ともそれぞれの縁があって早大に進むことになった。
小宮山監督も印出に「2年から、お前に任せる」
印出は明治神宮大会で優勝したため、2年秋の時点では高校チャンピオンということになる。小宮山監督は中京大中京出身だった早大野球部のOB会長に「早稲田に来て、勉強と野球をする気持ちはないか」と聞いてもらい、同校のグラウンドを訪問したという。
高橋源一郎監督から「キャッチャーで4番で、抜群のキャプテンシーを持ってチームを束ねている」と聞かされて、その場で小宮山監督はチームの将来を託した。
「入学してもいまは岩本(久重、現Honda)という4年のレギュラーキャッチャーがいる。彼が卒業した2年から、お前に任せる」
印出ありきでチームを作って、4年時のキャプテンもこの時に約束をしたことになる。印出本人の記憶も鮮明だ。
「2年目からはレギュラーを取って、4年でキャプテンになる――そういうキャリアを積んでいくイメージをもって頑張れと言っていただきました」