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箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
「スポーツ推薦ゼロ」「クラファンで合宿資金調達」“陸の王者”慶應がなぜ? 31年ぶり箱根駅伝へ本気で予選会突破をめざすわけ…「今年が戦力最大値」
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byYuki Suenaga
posted2024/10/17 11:00
名門・慶應義塾大が30年以上箱根から遠ざかり、クラウドファンディングで資金を捻出していると聞くと意外に思う人もいるかもしれない
クラウドファンディングの支援で夏合宿は1次が蔵王、2次が紋別、3次が菅平と3カ所で30日間、行うことができた。練習メニューは昨年と変わらないが、高地での設定は、例えば1000mのインターバルは昨年、Aチームは3分5秒だったが、今年は2分58秒になり、Bチームは3分5秒に上がった。紋別と菅平では田島曰く「30キロのガチガチの距離走」をこなしてきた。
「練習の消化率は良かったです。特にBチームで入学して5カ月ぐらいの選手がAチームに迫る勢いでやってくれて、それに刺激を受けたAチームの選手が頑張るみたいな流れが出来ました。また、昨年はBチームの多くが集団走から離れて単独走になった瞬間、まったく走れなくなっていたのですが、2次、3次と合宿をすることで改善できました。全体的にかなり成長した夏だったと思います」(田島)
データ分析で各選手の目標を設定
練習によって個々の選手のレベルアップを実現していく一方で、戦力分析班が作るデータも活用している。天候、気温でどんなレースになり、どのくらいタイムに影響するのか。予選会出場校のタイムから自分たちがどのくらいの位置にいるのか等々のデータを作成している。
戦力分析班の森内拓人(4年)は、こう語る。
「予選会は、留学生の集団、エースの集団があって、その後に各大学の集団がつづきます。うちは5キロ、10キロ、15キロの通過で、どの集団でレースをしていけばいいのかをデータ化して、保科コーチが指示を出す時の参考にしてもらっています。予選会を通過する確率を少しでも上げるのが戦力分析の仕事になります」
戦力分析が選手の目標設定に欠かせないものになったのは、全日本大学駅伝予選会の出場を目指した時だった。エントリーする8名の選手の10000mの合計タイムにより、上位20校が出場できるが、慶應はタイムが届かなかった。
「タイムを集計していくと出場が厳しい状況だったので、コーチからも『あと何秒足りないのか』と毎週のようにデータを聞かれたんです。最終的に出場できなかったのですが、『あと何秒、なんとかしないといけない』という目標が明確になり、チームとしてまとまってやっていく感じになったので、すごくやりがいを感じました」