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箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
「スポーツ推薦ゼロ」「クラファンで合宿資金調達」“陸の王者”慶應がなぜ? 31年ぶり箱根駅伝へ本気で予選会突破をめざすわけ…「今年が戦力最大値」
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byYuki Suenaga
posted2024/10/17 11:00
名門・慶應義塾大が30年以上箱根から遠ざかり、クラウドファンディングで資金を捻出していると聞くと意外に思う人もいるかもしれない
寮で送る共同生活
長距離ブロックの学生は、全員が寮生活だ。
「うちの学生は高校生までは実家で生活していたのが多いので、寮に入って共同生活をまず学ぶことから始まります。自分勝手な行動を慎み、整理整頓やお風呂掃除などの役割をしっかり果たすこと。忘れたり、サボったりすると罰則として1週間風呂掃除などをしてもらっています。寮を運営し、共同生活をする上で妥協はしないことにしています」
そう語る寮長の鳥塚健太(4年)は、昨年の箱根駅伝予選会でチーム4位の走りを見せた。今年も活躍が期待されたが、2月に膝を故障し、以前から「脚が抜ける感じ」にも悩まされていたので現役を引退し、寮長と学生コーチの二役をこなしている。
「寮長の仕事は、トイレットペーパーなど備品の管理注文からお金の管理、部屋割りとかですね。部屋割は大事です。2、3人部屋ですが、例えばいまひとつ陸上に集中しきれていない選手と木村(有希・4年)のように陸上ばっかみたいな選手とを組み合わせて、陸上を学んでもらうようにするなどけっこう考えます」
寮長兼学生コーチの気遣い
雑務が多いが寮長の一番大きな仕事は、選手たちのコンディションの把握だ。普段から選手を見ているので、ちょっとした行動や言葉などの変化で「おかしいなぁ」と思う選手には声をかけて確認するようにしている。
「僕は学生コーチという立場でもあるので、選手の日常的な状態や変化などを保科(光作)コーチに伝え、予選会のメンバー選考などの参考にしてもらえるようにしています」
現在の部員は、25名。駅伝強豪校の半分から1/3の部員数で、駅伝を戦うには、かなり少ない。普段の練習は、保科コーチの元、Aチーム、Bチームと故障などから復帰過程のCチームに分かれて行われている。Aチームは4〜6人、それ以外がBチームだ。練習が終わるとマネージャーが練習結果をまとめ、選手はスプレッドシートに練習の振り返りや状態を記し、それを全員で共有して見られるようにしている。
ただ、Aチームの人数が示しているように、戦力が潤沢ではない。
「うちは、昨年の予選会もそうだったのですが、中間層が薄く、予選会でいえば9人目、10人目の選手が出てこない。その層を厚くするために夏合宿が重要でした」(田島)