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箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
「スポーツ推薦ゼロ」「クラファンで合宿資金調達」“陸の王者”慶應がなぜ? 31年ぶり箱根駅伝へ本気で予選会突破をめざすわけ…「今年が戦力最大値」
posted2024/10/17 11:00
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph by
Yuki Suenaga
慶應、箱根へ。
そのスローガンの下に、慶應義塾體育會“競走部”が「慶應箱根駅伝プロジェクト」を掲げ、31年ぶりの箱根駅伝出場を目指している。
駅伝の強化には資金とスカウティング、指導という3本の矢が欠かせない。だが、慶應は資金面とスカウティングで極めて厳しい状況に置かれている。
そのために始めたのが、クラウドファンディングだった。
「慶應がなぜクラファン」と思うかもしれないが、體育會の活動費は大学からの補助がごくわずかで、OBの支援など自力での調達が主になっている。記録会や大会へのエントリー費用や遠征費用も基本的に自腹。練習の拘束時間が長く、バイトができないので「親に頭を下げてお願いしている」と田島公太郎主将(4年)がいうように、多くが両親から資金援助をしてもらっている。箱根駅伝の強豪校の多くは、大学やスポンサーからの支援で競技に集中できる環境にあるが、慶應はクラウドファンディングが成立しないと夏合宿すら行うことができない。
昨年の予選会は22位
田島は厳しい表情で、こう語る。
「他大学が夏休みの期間中あれだけ合宿をして強化しているのに、自分たちは力が足りない上に合宿が組めないと、どう考えても戦えない。個々の能力を上げてチーム全体の意識を箱根に向けるという点でも夏合宿は必須でした」
2年前は、444名から854万4000円が集まったが、予選会は26位に終わった。昨年は509名から1001万3000円が支援され、31日間の合宿を行った。結果は22位だったが、11人が自己ベストを更新し、全員が3年生以下のメンバーだったので、今年に繋がる予選会になった。
今シーズンも350名から927万9000円の支援を受けて夏合宿を行うことができた。
だが、スカウティングは毎年、大苦戦だ。
推薦枠がゼロなので、OBやリクルーターがめぼしを付けてきても一般入試かAO入試で合格しないと競走部に入部できない。他校のように特待生枠や推薦枠で優秀な選手を獲得することがまったくできないのだ。
「うちは、陸上を高校の勉強の息抜きレベルでやっていた選手がほとんどで、初心者も多く、5000mで15分20秒を切れば速いなって感じです。予選を戦う大学とはスタートからすごい差があるのが現実です。ただ、そこから育成で上がってくるのがうちの良さでもあります」
エースの木村有希(4年)も入学時は15分台だったが真摯に練習に取り組み、13分54秒42までタイムを上げて成長してきた。