野ボール横丁BACK NUMBER
「校歌の質問はタブーなのか…」迷う現地記者に京都国際の選手・スカウトが口を開いて…「学校に言うても動かないし」高校野球ウラ話
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byHideki Sugiyama
posted2024/08/25 11:02
今夏の甲子園を制した京都国際ナイン
そう問うと、岩淵は待ってましたとばかりに語り始めた。警戒心を解くための最初の説明がキーなのだと言う。韓国の歴史の授業があるが、反日教育ではないこと。校歌に抵抗があるのなら歌う必要はないこと。そして、日本人である自分がこの学校のために尽力しようとしていることが「あやしい学校」ではないことの何よりの証明なのだと懇々と説くのだという。
そして、最大の疑問をぶつけた。韓国語の校歌を変えようとは思わないのか、と。京都国際のイメージを決定づけているのは、何よりもまず校歌だ。
実は岩淵らスタッフは変えるために何度となく学校に掛け合ったが、理解者も多いものの、なかなか変更までは至らないのだという。
「いろいろとあるんっス」
もはや日本人が占める割合の方が多いとはいえ、理事長も校長も韓国人だ。それはいろいろあるのだろうと推察された。
小牧監督「学校に言うても何も動かないし…」
岩淵は校歌にまったく思い入れがないのだと語った。監督の小牧憲継(41歳)も同様だった。
「僕もまったく興味はないです。この学校に十何年いますけど、未だに何を言ってるのかわからないので。覚えようとも思っていません。学校に言うても何も動かないし、変わらないし、無視されてしまうので。その件に関しては学校に聞いてもらった方がいいと思います。はははははは」
――でも、優勝したら、また違って聞こえるものなのでしょうか。
「いや、優勝したことの余韻に浸ることはあっても、校歌に関しては何もないでしょうね。ははははははは」
甲子園で勝って校歌を歌う——。
これまで何度も聞いてきた夢の形だ。それは高校野球における一つのクライマックスなのだとさえ思っていた。
だが、京都国際にその時間は与えられていなかった。
〈つづく〉